レアアイテムが必ず欲しいものとは限らない
前回のあらすじ
救出
2:10 pm 海底迷宮・地下一階
迷宮の入り口に戻ると既にみんな揃って居た。海底ではあるが、そこまで深くないからか日光が若干届いているため、みんなのホッとしている顔がーー魔法の泡に包まれているーー見えた。狩りの邪魔をされて迷惑そうな顔してなくて良かったと心から思った。
「これで全員か。取り敢えず、ソバタは無事でよかったな」
みんなを代表してカイが声をかけてくる。笑ってるカイを見るだけでなんだろうか、俺もホッとする。
「ああ、心配かけてすまない。それで、この後はどうするんだ?」
話題を今後の予定に移す。
「それはさっき話し合ったんだー」
ゆきが答えた。心なしかニヤッとしている気がする。よくカイがゲームをしている時にしている笑い方だ。ということは…
「こんな美味しそうな狩り場、もったいないだろ?」
ゆきの言葉に続き、三条が結論を簡潔に述べてくれた。やっぱりな。ゲーマーとしてここは行くしかないでしょ、と昔カイが言っていた言葉が幻聴のように聞こえた。
「俺もマッピングを取ったから、階段の場所にもサメと遭遇した場所にも連れて行けるぞ」
俺が言うと、みんなの顔が一斉にこちらを向く。なんだろう、目がキラキラしているような…
「やっぱり宝はあるのかな。各フロアにあると思うのだけど?」
宝?ってアイテムの事か?俺が首をかしげる間にも会話は進んで行く。
「ボクもフロアごとにあると思うよー」
「俺は最深部にあると思うな。ボスが守ってたりしてな」
「うちも三条に賛成やな」
カナさんが聞くと、ゆきは手を頭の後ろで組んで、三条は胸の前で腕を組み、プロムは槍を地面に突き刺し背もたれにしそれぞれの自論を話した。と言うか、
「宝がある前提なんだな…」
「当たり前だろ?ソバタはもっと夢見ようぜ」
夢を見る、か。ゲームだからもっとはっちゃけろって事か?まあ…確かに一理はあるな。
「さて、俺は各フロアにあると思うな。ソバタは?」
カイは改まって俺の意見を聞いてきた。各フロアに宝、ね…確かにサメがうろつくくらいの何かがあるのかな?あると思ってみようか。
「俺は…あると思う」
「じゃあ多数決でいいか?」
「構わんぞ」
自分の意見が通らなかった三条はさして気にしない風に受け入れた。風というかどちらでも良かったんだろうな。
パーティの意見がまとまったところで
「ならフロアごとに隅々まで探索だ!まずはソバタの先導でサメの遭遇地点まで移動、その後はマップを埋めて行き、宝を見つける。連絡はソバタが使えるテレパスを使って密にするぞ。ここまではいいな?」
「「「「「了解」」」」」
カイが指示を次々出して行く。本当にいつものカイとは見違えてリーダーシップを取っているものだ。
「カイ、テレパスはフレンド登録している人にしか行使できないぞ?」
「なら今してくれ…続けるぞ。チームは…」
カイがチーム分けを発表する傍ら、俺は他の4人とフレンド登録を済ませていく。前も思ったが、こういう連絡先の交換ってなんか恥ずかしいな…
「…よし、これでいいな?じゃあソバタ、テレパス頼むぞ」
「おう〈テレパス〉」
「ねーソバター。それって全員選べないの?」
俺がテレパスを行使した時、ゆきから質問が飛んで来た。確かに試したことはなかったな。杖をもって準備体操をしてーー必要があるのかは不明ーーいるゆきに答える。
「試してみるぞ。カイ、プロム、ゆき、カナさん、三条」
すでに聞き慣れたコール音の後、カイを除いた4人が身体をビクッとさせた。最初に繋がった時は俺もびっくりしたな、とつい数日前の思い出に耽る。
「どうやら繋がったみたいだな」
『これ…でいいのか?』
『すごーい!』
『全員で喋れるんだこれ。魔法って本当に便利だな』
こうして俺たちはテレパスを繋ぎっぱなしのままサメのいた場所に戻り、探索を開始するのだった。
2:40 pm 海底迷宮・地下一階
マップを頼りに、先ほどサメと遭遇した地点まで戻って来た。知らないうちに道が変化していた…なんてことはなく、見たことのある十字路に差し掛かった。
「ここがサメのいたポイントだ。みんな気を引き締めてくれ」
ついたところで俺が声をかける。今まで出て来たのはイカにダツ…要はこのメンバーでは簡単なモンスターだっただけに、少し浮ついた空気が見られた。このままサメに遭遇したら、狩れはするが必要以上に消耗することもあるだろう。
『ソバタの言う通りだな。どこから来るか分からないから、みんなしっかり警戒してくれよ?』
三条が呼応する。いや三条、さっきまで水中で宙返りしたりして遊んでいたのは三条じゃないか…?
『一番はしゃいでたくせによく言うわね』
カナさんも呆れた様子だ。
『さーて、ここからは手筈通りに動くぞ。幸運にもテレパスは全員が喋れるからな。効率的にマップを埋めていくぞ』
カイが剣を握り直しながら指示を出す。目は既に真剣モードだ。その姿を見て各々も気持ちを切り替えていく。
ここからは3チームに分かれて行動し、マップを埋めつつ宝を探す。サメに遭遇したらテレパス経由で救援を呼ぶ、宝を見つけたら連絡する、と言うことを事前に決めてあった。そして、俺とチームを組んだ相手は…
『ソバタよろしくねー!いざとなったら守ってね?』
俺の後ろで未だにはしゃぐゆきだった。ゆきは転職でエレメンタルソーサラーの氷を選んではいる。が水魔法もお手の物で、今も水流を操ってでも居るのだろうか、複雑な動きで縦横無尽に駆け回っている。本当にどうやって泳いでいるんだ…?
それはさておき、現在の布陣を説明しよう。前方には光球、その後ろに鳩36匹を壁のように配置している。その後に続くのは俺、さらに後ろにもう1つ出した光球を挟み、ゆきだ。ちなみに残りの36匹はさらに後方でゆきを護衛する形で置いている。
『カイ、横!ダツや!』
『前からも来てるんだって!そっちは任せる!』
『三条突っ込め!回復は任せて!』
『人使い荒いな!行くぜ!〈クラッシュ〉!』
ゆるく泳いで探索している間にも、テレパスを経由して喧騒が伝わって来る。
『ボクたちのとこだけ全然モンスター湧かないねー』
器用に回転しながらゆきが話しかけて来る。
「どういうことなんだろうな。ここまで遭遇しないとは…このまま宝を見つけられそう…!?」
話している途中で急に甲高い警報が鳴る。敵感知だ。この反応は…
「サメ!救援求む!」
『…それなんて言うか知ってる。フラグって言うんだよ?』
ゆきが呆れていた。解せぬ。
『サメ?了解、そっちに向かうわ!』
『こっちも急行するぞ!耐えろよ!』
それぞれのチームを代表してか、カナさんとカイが返事を寄越す。その間にも警報音は大きくなって行く。
「ゆき、後方の警戒頼むぞ。見えないってことは十字路を横切って来るかもな」
現在俺たちは十字路と十字路の間の一本道にいる。どちらから来るかは全く分からない恐怖からか、自然と後ろに身体が進んでしまう。
「!?ああ、ゆきか…」
ゆきも同様だったのだろうか。偶然背中合わせになった。スク水越しにゆきの小さい身体を感じ…ってそんなこと考えてる場合じゃないな。
『びっくりしたよもう…あ、今通った!サメっぽいの!』
その声を聞き、俺の前方に置いてあった鳩を後方へ急旋回させた。同時に俺も振り向く。通り過ぎたようだが、警報音は鳴り止んでいない。一旦は小さくなったが、だんだん大きくなってきている。つまりこっちに気がついて態勢を変えているということだ。
「ゆき、来るぞ!俺が前に出る!」
『援護は任せて!』
そう言ってゆきの前に出て杖を構えると、俺の左右に氷の球が生まれた。ゆきの魔法だろう。
鳩を壁状に編成し終えた頃、サメが姿を見せた。鑑定を発動させるまでもなく、前に見たサメなのだろう。凶悪な牙が顔を覗かせている。まずは…
「鳩!行け!」
鳩を突撃させる。その後に氷球が続いた。
互いに急接近するサメと鳩はすぐに衝突した。だがさすがはサメと言うべきか、物ともせずに突っ込んで来る。そのスピードに衰えは見えない。続いて氷球が衝突…!接触したサメの左頰が凍った。氷魔法は凍らせるんだったか。良い足止めだな。
『〈アイシクルピラー〉!』
氷球が衝突した直後に、ゆきがさらに魔法を唱えた。新しい魔法か?と思った瞬間、凄いスピードで何かが後ろから過ぎ去った。サメに向かって飛んで行く物を見れば、氷の…柱?
勢いよくぶつかったサメはよろめき、さらに頭が完全に凍りついてしまった。凄いな…
『ソバタ!トドメ刺しちゃって!』
ゆきの言葉で我に返った俺は杖を握り直し、だいぶ接近していたサメに一撃を食らわせる!
「はああああ!」
水の抵抗を一番受けない攻撃方法…すなわち突きをサメの柔らかそうな下腹に与える。と、サメが消える。力尽きたようだ。
『戦闘に勝利しました!』
『種族レベルがレベルアップしました!』
『職業レベルがレベルアップしました!』
『光魔法がレベルアップしました!』
『奇術がレベルアップしました!』
これで光魔法と奇術はレベル19になった。新しい魔法を覚えただろう、後で確認するか。と、
『おーい…って、もう終わったのか!』
何かが前方から迫って来るかと思えば、カイが救援に到着していた。もっとも…
「終わったよ。ゆきのお陰でな」
『いやいやーソバタの足止めで氷柱間に合ったんだから、おあいこだよ?』
サメを狩って気分も良い時に、この場にいないプロムから連絡が入った。
『ご歓談中ええか?宝っぽいの見つけてさかい、来てくれへんか?』
この一報に、全員がざわめきだした。
3:10 pm 海底迷宮・地下一階
プロムの口頭での道案内で、俺たちはちょっとした広間に到着した。中は光球がなくてもほんのり明るい。どう言う原理なんだこれ…ちなみにプロムは説明下手であった。これ以上は何も言うまい。
『んで、これが宝箱か。いかにもって感じだな』
カイの言う通り、これ以上ないくらい宝箱っぽい宝箱だった。
『誰が開くよ?』
三条が質問すると、全員一斉にこちらを向いた。え、俺?
「俺で良いのか?」
『だってこの迷宮見つけたのソバタじゃん?良いと思うよ』
みんなの気持ちを代弁するかのようにゆきが発言する。みんなも頷いたりして肯定の意を示した。
「なら開けるぞ」
そういって俺は宝箱に手をかけた。
『そういえば罠とかってあるのかね?』
開ける瞬間、三条が口を開いた。ちょっと待て、それを今言うか!?
開きかけていた段階で言われたため、戻そうとしても間に合わなかった。開けてしまったことを後悔しながら身体を素早く宝箱から離し、構える…
『…罠はなんもなかったね』
罠が発動することはなかった。安心すると同時にふつふつと怒りが湧いてくる。俺はてへぺろと言いたそうな三条へ振り向き、
「おい三条、そう言うのはもうちょい先に言ってくれ。死んだらどうする」
文句を吐露した。
『まあまあ、何もなかったんだし許してくれよ。今思いついたんだからさ』
両手を上げて降参のポーズを取る三条を尻目に、カナさんがこっちに向いた。
『それより宝箱の中身確認しましょうよ。良いレアアイテムかしら?』
「そうだな、見てみるか」
さっき離れたぶんを泳いで近づき、期待とともに中を覗く。何が入ってるかな、ポーションの類かな…?
「…?」
箱の中には、布が折りたたまれて入っていた。これは一体なんだろうか。鑑定を発動してみる。
マーメイドのコスチューム 耐久500
履けば人魚の気分になれる。水中機動が格段に良くなる。
「…」
思わず絶句してしまった。
エタってません(生存報告)
ソバタ
人間 男 種族Lv18
職業 マジシャンLv6
ボーナスポイント6
ATK10
DEF2
MATK12
MDEF2
SPD11
DEX11
LUK2
セットスキル
SP残24
火魔法Lv13 光魔法Lv19 闇魔法Lv17
雷魔法Lv7 時空魔法Lv16 奇術Lv19
鑑定Lv27 軽業Lv28 識字Lv10
魔力回復上昇(微)Lv20 持久走Lv5 罠Lv4
ダッシュLv8 敵感知Lv19 回避Lv15
隠蔽Lv5 殴打Lv2 高速詠唱Lv12 杖術Lv7 水泳Lv18 マッピングLv-
取得呪文
ファイアボール
ヒートタッチ
ファイアアロー
フレイムラジエーション
シャインボール
ライト
シャインアロー
ホーリーライト
???
ダークボール
カモフラージュ
ダークアロー
イビルスピリッツ
ライトニングアロー
ボルトタッチ
ディメンションアロー
フライ
テレパス
マジカルピジョン
カード
アテンション
???