照れられるとこちらも照れる
前回のあらすじ
膝枕
11:00 pm 研究所内・211
次に目覚めたのは浴槽の中だった。どうやら時間だったらしい。俺はゆっくり起き上がり、服装を整えた。そうか、だいぶ長い間戦っていたんだな…と、どこか感慨深げに思っていた。
身支度が終わったところで、外へ出る。いつもの通り、コーヒーを貰いに行き、中庭へ向かうのだ。ドアの外は、無人ではなかった。ただしプレイヤーはいない。白衣を纏った研究員があくせくと働いていた。俺はすれ違う研究員に会釈しながら廊下を通って行った。
食堂は無人だった。俺はもう慣れた手順で、コーヒーをドリップさせる。とは言ってもカップをセットしてボタンを押すだけだが。
静かな空間にコーヒーを淹れる音が響く。それを無心で聞いている…と、足音が聞こえた。
「あれ、ソバタくん。今日も?」
振り返ればフェイだった。彼女の右手にはカップが握られている。今夜も一緒に中庭で飲むのだろうか。
「今日もだ。外の空気も吸いたいしな。あとは軽い運動も…できた。次使っていいぞ」
フェイは呆れ顔をした。
「ありがと…運動ってここから中庭まで歩いて何歩よ。ドア開ければすぐじゃない」
「ないよりマシだろ?このままじゃ体が鈍る」
「あ、もしかして知らないのかしら?ジムで体を動かせるとか」
「…知らなかったな。今度行ってみようか」
「そうするといいわ…中庭行く?」
コーヒーを入れ終わったフェイが提案した。もちろん断る選択肢などない。
「行くよ」
ベンチに座るまで、俺たちは無言で歩いた。今日も夜空は澄みきっている。
「まあ取り敢えず、ボス戦お疲れ様」
フェイが座ってから口を開いた。
「ああ、お疲れ。どうだった?」
「そうね、2人は流石にきつかったかしら。でも楽しかったわよ?また一緒に狩りしましょ?飛びながら打つの、楽しかったわ」
「分かった。また今度な」
「あ、そういえばソバタくん、ボス戦の時私を守ろうとして無茶したでしょ。死に戻りしたらどうするのよ」
「あれは…フェイが死に戻りしたらフェイはクリアしたことにはならないだろ?俺は死んでも既にクリアしてるからな」
フェイを守りたかった、なんて俺の口からは絶対に言えない。うざいと思われても仕方のないセリフだろう。
「私だって避けれたわよ…でも、その、ありがと。私寝るね」
フェイが照れながらお礼を言ってくれた。これは破壊力が高い…ついどもってしまった。
「お、おやすみ」
「おやすみなさい」
そう言ってフェイは帰っていった。
「…俺も帰るか」
残ったコーヒーをグビッと飲み干し、俺も腰を上げた。
やっと3日目が終わりました。
感想に誤字が酷いとの指摘が多々寄せられております。金箔自身もそれは自覚しており、見つけ次第改訂していますが、なにぶん数が多く、仕切れておりません。誤字が酷いと単に指摘するだけでなく、ここがこう違う、という風に記載して貰えるととても助かります。誤字撲滅にご協力お願いします。
あと、ジャンル別日間1位になってました。これもみなさんのお陰です。ありがとうございます。金箔頑張って書くので、これからも奇術師をよろしくお願いします。