ネタじゃないんだ!俺は普通にやっていただけなんだ!
前回のあらすじ
整頓は日頃からやらないと取り返しがつかなくなる
6:05 pm 研究所内・大浴場
ゲームを中断させた俺とカイは、大浴場に来ていた。
「いやあ、昨日も言ったけど浴場広いな!」
「確かにここの研究所は都内にも関わらず土地が広いな。それだけ儲かってるってことなんだろうな」
浴場だけで多分学校の教室2つ分くらいはあるだろう。
現在混み合っている浴場では、俺たちは1つのシャワーを代わり番こに使っていた。
「そう言えば相談ってなんだ?」
俺は浴場に来る前に相談があるとだけ言っていた。議題は魔法の発動時間が遅くなったことだ。さて、どう伝えていいやら…
「あー、魔法が発動するまでいつもより時間がかかった気がしてな。なんか聞いてないか?…シャワー借りるぞ」
「ああ…んー?変わる前後で何かしたか?…シャンプー取ってくれ」
「ほい。そうだな…転職して、杖を新調したくらいか?」
「なら転職が原因だな。エレメンタルソーサラーだと指定した属性以外は威力も発動時間も劣化するんだとよ?」
「なるほどな…エレメンタルソーサラーじゃないけど」
「じゃあなんだ?エンチャンターでも取ったか?」
「なんだそれは。聞いたことない…マジシャンだよ、マジシャン」
「…?」
「お前その顔はなんだ」
「そんな選択肢知らねえぞ」
「え?いや、俺普通にマジシャンになったんだけど…」
なにやら悩んだ顔つきのカイは後ろをーーつまり浴場にいる他の客をーー向いて喋った。
「おーい!誰か、ソーサラーの上位職でマジシャンってあるの知らないか?」
「知らないな!なんだそりゃ!」「聞いたことねえぞ!」…みんな口々に叫ぶが、内容は同じ。知らないという回答だった。
「てことは…隠しジョブじゃねえか!?」
「マジ!?俺も話に混ぜろ!」「俺も聞きてえな」
急に大浴場が議論の場になった。
温泉に浸かりながら情報をみんなに整理してもらうと、いくつか仮説を立てることができた。題をつけるとすれば、「マジシャンの出現条件」と言ったところか。
1.所持スキルに影響
隣に浸かってるお兄さんーーダルと言うらしいーーが言っていた。エレメンタルソーサラーと同じように持っている魔法に関係があったのではないか、と。
2.ステータスに影響
これはカイが発言した。曰く、「何かが一定以上の数値とか、どこかの数値よりどこかの数値の方が高い、とかじゃないか?」だそうだ。
結局議論が白熱してのぼせる人が出てきたのでお開きにはなったが、俺もこのどちらかだと思う。検証しようみたいな流れになっていたが、如何するのだろう。
7:00 pm 研究所内・食堂
「と言うわけで、第二回マジシャン検証会議!意見のある方は挙手してから喋ってくれ!」
長机を囲んだ50人は居るだろう男たちは真面目な顔でーー半分はノリだろうーー議論を始めていた。
と、まずいかにもゲーマーという風の男が挙手をする。
「俺は、ステータスに影響すると思う。さっきも少し言ったが、所持スキルにそれに該当するものは見つからない。奇術なるスキルも、転職してから取得したものだろう?」
「そうだな、俺もそう思う」
「なあ、特定のアイテムを持っていたってことはないのか?」
「ないとは言い切れないな。なあソバタ、その時どんなアイテムを持っていたんだ?」
「んー、熊系のアイテムくらいか?」
「武器防具はどうなんだ?」
「防具は初期のままだ。武器は…ああそうだ、作ってもらったやつがあったな」
「ハンドメイドかあ…となると…」
ちょくちょく話を振られながらも議論を見ていると、後ろから声をかけられた。
「ねえねえ、これなんの騒ぎ?」
ゆきだった。風呂後の女の子は…その、難易度高いです…
「えっ…と、俺が転職したモノが隠しジョブじゃないかっていう話をしててな」
「えええ!何になったの?」
「マジシャンってジョブ」
「マジシャンかあ…ジョブ特性わかってるの?」
「火、光、闇しか持ってないから絶対とは言えないけど、魔法の発動スピードが遅れてる…くらいかな」
「普通はね、上位職は何かに特化してるんだけど。何かないの?」
「奇術ってスキルが取得出来て、そのスキルの魔法が使えるくらいかな…?」
「なんてやつ?どんなの?」
「マジカルピジョンって魔法。属性をセットして飛ばせるんだよ」
「…カナ姉、ピジョンってなんだっけ?」
ゆきのうしろにはカナさんもいた。破壊力が凄まじい、とだけコメントを残しておこう。
「鳩のことだよ、ゆきちゃん。ってことは鳩を飛ばすの?」
「そうなるな」
「それただの手品師…」
「おーいソバタ!ステータスを言える範囲で言ってみてくれないか?」
「確か…MATKとDEXとSPDを同じ値にしてた気がするけど」
「それじゃないか?手品師と言えば手が器用…つまりDEXだ。これを上げれば、またはMATKと同値以上ならっていうのでどうだ?」
「そうだな」「賛成」…
「そうだソバタ、マジシャンの長所と短所、わかるか?」
「短所は言えるぞ。今まで使っていた魔法の発動までの時間が長くなっていた。目算2倍かな」
「そりゃひでえ…んで、長所は有るんだろうな?」
「マジカルピジョンはほぼノータイムで使えていたぞ。威力は…わからんな」
「あんまり選ぶメリットなさそうだな…まあネタとしてはアリか?」
「ネタ育成!いいじゃないか!」
「装備も手品師で揃えろよー」
「無茶いうな、タキシードとかどっから調達…」
「ソバタ、ムンコの店にあったぞ」
「よく見てるなお前」
「俺も手伝うぜ!せっかくなら自分の道を突き進めばいいだろ?」
そういうわけで、俺は一躍ネタプレイとして話題になったのであった。解せぬ。
祝PV8000!皆様のおかげで、毎日ウキウキしながら執筆したいられます。本当にありがとうございます!これからもよろしくお願いします!
次回、ムンコ再登場!?