第九編 ようこそ、冒険者ギルドクバサナ支店へ
ちょっと、長くなってしまった。
説明回は長いよね。
俺達の目の前に大きな建物が建っている。
木製に、ところどころ石材で建てられている二階建て。
盾の形の板に剣と杖が交差している看板と思わしきモノに見慣れない文字が書かれていた。
『冒険者ギルド クバサナ支店』
木製のドアを開けて中に入る。今度はちゃんとした、押し戸だ。
細長いカウンターに何人かの女性が座り事務仕事をしている。奥にも作業をする人がいて、カウンターの横には通路らしき道がある。
右手には、酒場なのだろうか、狭いカウンターに大男が1人、忙しなく働いている女性が1人、冒険者と思わしき風貌の人達が大タルの上にある料理や酒をかっ喰らっている。
左手はボードがあり、紙が何枚か貼ってあった。
…凄い、小説のネタに使えそうなのばかりで胸を踊らす。しかし、一歩一歩と目の前のカウンターに近づくたびに増える視線が痛い。
オサカは、俺の後ろに隠れるように歩いている。
「冒険者ギルドクバサナ支店にようこそ。依頼ですか?買取ですか?」
セミロングの茶髪に少しツリ目気味の目、薄い唇で背筋をピンと伸ばした女性が凛とした表情で俺を見ている。
綺麗な人だなぁ〜と見惚れていると服をグイッと引っ張られ正気に戻された。
「すまない、冒険者登録したいんだが…」
「はい、ありがとうございます。それでは、こちらに必要事項をご記入下さい。もし、字が書けないのであれば料金は頂きますが代筆を致します。」
「いや、自分で書くよ。」
渡された2枚の羊皮紙にそれぞれ名前、種族、主要武器、(書ける範囲の)スキルを書いて提出する。流石に、出身地は日本と書けないので空白にしておいた。
女性は羊皮紙を受け取ると、後ろの部屋に消え少ししてから2枚の板を持ってきた。
「ノーダ様とオサカ様ですね、ご登録ありがとうございます。私は、冒険者ギルドクバサナ支店のギルド職員ナテウといいます。よろしくお願い致します。
それでは、ギルドの規則をご説明致しますのでこちらをご覧ください…
文字がビッシリと書かれた羊皮紙を渡された。
・冒険者ギルドは各国に点在しているが基本的に国には属さない機関である。但し、有事の際は例外とする。
・冒険者ランクは最低がEランクで最高がAランク、冒険者の栄誉としてSランクがある。初心者冒険者はDランクまで、Cランクから一般冒険者、Aランクが一流冒険者となる。Cランクに上がる為には必ず進級試験を受けなければいけない。ランクを上げる為には、一定数の依頼を成功させるか、ギルド又は国に貢献する事。
・依頼を受けるには、依頼ボードにある依頼書とギルドカードを提示して受ける事。但し、上位ランクを受ける場合は自分のランクより1つ上のランクまでしか受けれない事。成功報酬は依頼主から貰う依頼完了書とギルドカードを持ってくれば渡すし、討伐した魔物は買取カウンターで買い取るとの事。
・依頼を失敗してしまうと成功報酬の3分の2の罰金を支払わなければいけない。失敗が続くとランクを下げられる事。
・殺人や略奪等のギルドの信用を著しく陥れる行為は除名処分が降る。
・ギルドの依頼で受けた怪我や死亡は一切の責任を負わないし、冒険者同士の争いもギルドは関与しない。
…大まかなことはこれぐらいです。詳しくはお渡ししたギルド規定書をお読み下さい。何か質問は御座いますか?」
「ぁっと、依頼は受けてないけど討伐した魔物は買取してくれるのか?」
「ハイ、大丈夫ですよ。隣の窓口で買取させて貰います。……ご質問がなければ、こちらの板にそれぞれの血を垂らして頂けますか。」
差し出された鉄製の薄い板にそれぞれ針で血を垂らす。すると、文字が浮かび上がってきた。
それぞれの板に名前、種族、主要武器、ランクが書かれている。
「確認が取れましたので、そちらがお二人のギルドカードになります。なお、ギルドカードはご自身の身分証にもなっています。紛失などで再発行するには銀貨5枚を頂いております、お気を付け下さい。」
そういえば、《通貨 値段》で検索をかけたら
鉄貨1枚が十円、銅貨1枚が百円、銀貨1枚が千円、金貨1枚が一万円、大金貨が十万円、白金貨が百万円と検索結果が出た。
つまり、再発行には五千円もかかるということだ。
微妙に高い気がするが、それだけ貴重ということなのだろう。
ナテウにお礼を言い、早速隣にある買取カウンターに向かうと、薄茶色のショートカットに頭には犬耳が生え顔は人寄りの女性獣人が楽しそうな声で話してくる。
うん、可愛い子だな。俺は普通、俺は普通
「いらっしゃいませ!冒険者ギルドクバサナ支店のギルド職員ラーラです。買取ですよね、ギルドカードと買い取る魔物を出しください。」
それぞれギルドカードを出し、とりあえずリュックサックからグリンゴブリンの死骸10体をカウンターに出した。
ラーラは、鼻息が荒く目を丸くして驚いている。
「そ、そのまま持って来ちゃったんですか!奥に案内するから移動して貰えます?」
リュックサックに死骸を仕舞い、ラーラの案内で奥に移動すると突き当たりには広々とした空間が広がっていた。
「ガンツさーん、ガンツさーん!いますー!!」
「おぉぉ、ナーナか。どうした…またサボリか?」
「ちょっと、人聞きの悪いこと言わないで下さいよ。お仕事ですよ。お、し、ご、と」
所謂悪人ヅラで肩の部分をザックリと切った服を着た筋肉隆々の男が近付いてくる。