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どうなる、俺の異世界執筆活動。  作者: 土塊ナパンナ
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第八編 嘘と似てない兄弟

  俺達は、部屋から出ると森の出口を目指して歩いていた。


「ギャギャギャ!」「ギャギャギャ!」

「えぃっ!」


  ゴブリンが振り下ろした剣を逢坂君は折れた剣で受け止めると、すかさずもう片方の手に持つ折れた剣でゴブリンの脇腹を殴る。苦痛で顔が歪むゴブリンは動きを止め、できた隙にゴブリンの脳天を力の限りかち割った。仲間がやられ怒りに任せて突っ込んでくるゴブリン達をなんなく避け続けながらも、次々と倒していく逢坂健太を観察する人間が1人。


  どうも、役立たずの乃田翔吾です。

 ……いや、役には立つってるんだよ。彼が使っている武器を出したのはなにを隠そう俺だから!

あれから、あの部屋に置いてある物をスキルで観察したり執筆の力で出してみたりしたが、殆どの物は名前だけ観察は出来たが執筆で出す事は出来なかった。

ならばと次に試したのがゴブリンの死体…にあった折れた剣。

なにかの役に立つだろうと持ち帰った俺を褒めてほしい。


《折れた剣:刃先は折れ、武器としては心もとないが無いよりはマシな剣。》


多分、《スキル:執筆》のレベルが上がった事で出来るようになったんだと思う。

 とは言っても、やっぱり観察したやつしか出せないのは変わりないらしくもっといい武器の方がと『ショートソード』と書いてみたが出るわけもなく、仕方ないのでゴブリンが使っていた折れた剣を2つ出して逢坂君に使ってもらっている。

 唯一の戦闘系スキルを持っている逢坂君だが彼の内面を考えると心配ではあったがそんな心配を払拭するかのように彼の二刀流スキルは随分と役にたっている。

 元々の太刀筋も熟練者のような動きをしていて、身体能力もスキル通りにやはり上がっているのだろうか一撃離脱をしながら敵を倒していく。

 俺は観察スキルが上がり名称だけではなく説明文も付いたので、使える薬草やキノコを調べて採取したり、道中遭遇する魔物を観察し執筆で使える魔物を増やしていく。

 もちろん、倒した魔物の回収も忘れずにやっていますよ。


「乃田さん!後少しで森の出口みたいです。」

「分かった。」


  欝蒼と茂る木々の向こう側に光が見えてきた。

 俺達は、はやる気持ちを抑えて光に向かって歩いていく。

 森を抜けるとそこは草原でした。(2回目)


「ちょっと、人がいる村か町がないか調べてみますね。」


  逢坂君のスキル検索がレベル3になったことで、目的地検索が出来るようになったみたいだ。

 文字通り、行きたい場所を検索すると現在地と検索をかけた場所が頭の中に浮かんだマップに表示されるという便利すぎる力だ。

 ……やっぱり、俺はいらない子なんでしょうか。

 項垂れている俺を心配そうな目で覗き込んでくる逢坂君に気恥ずかしさを覚えながら検索結果の村に向かって歩いて行く。


  大きな家の周りに木製の家がチラホラ立ち、中央の広場らしき所には井戸があり女性達がおしゃべりに興じている。町を囲むようにあるのかないのか不安になる柵が置かれ、その外では大小様々な畑で畑仕事をしている人もいる。

はっきり言って、ショボい。

 だが、隣にいる人物は違ったようだ。


「す、凄い!本当に別の世界に来たんですね!僕たち」


  純粋な幼い瞳に町の風景を写しながら俺の袖をグイグイと引っ張り興奮している。


「お前達!こんな所でなにをしている!」


  ロングソードを振りかざし安っぽい布製の服を着込み、鉄の胸当てに頭部を守る冑を着けた男が目の前に立っている。


「おい、聞いているのか!そこの2人、どこから来た!」

「いや、俺達は旅をしているだけでここに危害を加える気は…」

「嘘をつけ!そんな装備で旅なんてできるわけがないだろうが!」


  確かに、俺は手ぶらなうえにリュックサックを背負っているだけの出で立ち、逢坂君は武器は持っているが防具類は一切なしの2人とも向こうの世界の服を着ているので完全に浮いていた。

  そんな怪しい格好の2人組みが目の前にいるので、取りつく島もなく睨みを利かしているのはしょうがないのかも知れない。


「乃田さん、後ろ…」


  逢坂君の言葉に背後を振り向くと同じような装備をした2人の男達に囲まれていた。


「隊長、こいつらどうしますか。」

「そうだな…お前達、とりあえずそこの詰所まで来てもらおうか。」


  俺達は、入り口近くにある建物について行く。

 中は、意外に広く粗末なテーブルに何脚かの椅子、ベットがあり剣や鎧が立てかけてあった。

 俺達が椅子に座ると、隊長と呼ばれた男が冑を外しながら目の前に座る。


「それで、旅をしているとの事だが何処から来たんだ。」

「……ここからかなり遠いところで、弟と旅をしながら冒険者を目指しているんだ。」

「…………弟?随分似てない兄弟だな。」


  これは、逢坂君と事前に決めていた嘘だ。

 異世界モノでもある自分達の設定を決めておこうと話し合った末に、俺達は腹違いの兄弟で遠くの誰も寄りつかない森の中で身を寄せ合って暮らしていたが両親を病で亡くしまい、頼る人が居なくなってしまったので旅をしながら冒険者を目指しているという事にした。

 なるべく重い声色で俺達の生立ちという嘘を説明しているが正直、無理がある設定だなと自分で思う。

しかし、目の前の隊長と呼ばれた人は違うようだった。

 ボロボロと嗚咽を零しながら目を真っ赤にして泣いている。


「そ…そうか…2人とも…大変な目にあったのだな。

 よし、ここにいる間は私が2人の身分を保証しよう!」


 隣で座っている逢坂君が、テーブルの下で小さくガッツポーズをしている。…こら、後ろにバレるでしょうが。


「ですが、隊長。初めて村に入る人には税を納めてもらわないと。」

「そうだな…お前達、何か売れる物はあるか?」

「売れる物…」


 俺は、背負っていたリュックサックから10体のゴブリンの死骸を出した。


「これでどうでしょうか。」

「おおっ、グリンゴブリンか。それに、こんなに大量に!まさか、そのリュックサックはマジックボックスか!」

「これがマジックボックスですか!」


 守衛隊の2人は驚いたようでマジマジとリュックサックを見ている。


「あの…それで、村に入ることは…」

「スマンスマン、この目でマジックボックスなんて代物を拝めるとは思わなくてな。」


 隊長は、恥ずかしそうに頭をかく。


「そうだな、とりあえず冒険者になるならギルドに登録しないと始まらないからな。ギルドに登録したらコレを売った金でまたここに来てくれ。」

「分かりました。俺は、乃…ノーダって言います。こっちが弟のオサカです。」

「初めまして、ノーダ兄の弟のオサカです。」

「挨拶が遅れたな。私は、クバサナ村の守衛隊長ソウだ。そっちにいるのが、タバサ。お前達が最初に会った隊員がヤンタナだ。

 タバサ、ノーダ達にギルドまでの道を教えてやれ。

 2人とも、冒険者になるということは大変なことだ、頑張れよ。」

「「ありがとうございます。」」


  死骸をリュックサックに戻すと、タバサに連れられて詰所を出る。


「ギルドはこの大通りを真っ直ぐ歩いて目の前に見えている大きな建物ですよ。なにかあれば私達を頼って下さい。」


 タバサにお礼を言い、ギルドに向かって歩いていると逢坂君が目を細めながら隣を歩く。


「上手くいってよかったです。あの、これから…よ、よろしくお願いします。ノーダ兄。」

「ああ、よろしく。オサカ」




難産だよ〜難産だよ〜

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