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どうなる、俺の異世界執筆活動。  作者: 土塊ナパンナ
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第四編 大きな翼を持つ赤い鱗のドラゴン

苦しいよ、お話を考えるのがこんなに苦しいなんて。

 ドアをくぐるとそこは美しい草原でした。


  とは言っても、これからどうすればいいか分からない。

 超大作の小説の持ち込みというチャンスを寝坊という大失態で不意にしてしまい、失意のどん底にいるときに変なうさぎ娘に原稿入りカバンを取られ、追いかけたら穴に落ち、異世界旅行に半強制的にご招待され、ノカ爺と奇妙な部屋でお世話になり、手に入れたスキルも使えるのか使えないのか微妙だったし、これからの目的も分からない。

 とにかく、俺は露頭に迷っていた。


「歩くか。」


  あてもなく彷徨い歩いて1時間ぐらい経過したところだろうか。

 急に地面が暗くなった。いや、暗くなったというよりも巨大な影が出来た。

 おもむろに、顔を空に向けてみるとドラゴンが飛んでる。


「うぉーー、初ドラゴン」


  ドラゴンはそのまま俺の頭上を咆哮を上げながら通り過ぎる。

 俺はテンションが上がり、カバンから1冊のノートを取り出した。

 俺は日課にしているというか癖になっている事がある。

 小説のネタになりそうなものをノートのネタ帳に書いていくことだ。

 これでも、超大物小説家を目指す端くれ。

 日々の何気ない日常やたまの散歩で見た光景や出来事、思いついたものはすべてネタ帳に書き込んでいく。何が小説の題材になるか分からないし、この中からいつか大作は生まれてくるのだ。

 因みに、これで5冊目のネタ帳だ。

 しかも、ここは異世界!!

 ネタ探しの宝庫だと言っても過言ではない。

 カバンの中を探る……書く紙はあっても書く物がない。

 いつも持っているネタ帳は入れた記憶があったがボールペンはおろかシャーペンも無い。

 多分、あのときに慌てていたから入れ忘れたんだ。


「そ、そんなバカな。こんな機会は2度と来ないかもしれないのに。」


  考えて考えて考えてある事が閃いた。

 そう、《スキル:執筆》があった。いつも使っている物ではないがこの際何も無いよりはマシだ。

 さっそく、《スキル:執筆》を念じる。手のひらに鉛筆が現れた。

『大きな翼を持ち4足の赤黒い鱗のドラゴン。

 体長5㍍以上、体重不明、飛行可能、咆哮大』

 ネタ帳に先ほど見たドラゴンを書いていく。

 突如、頭の中に音声が聞こえる。


 《レッドドラゴンを召喚します。執筆レベルが足りないので召喚出来ません。》


「んんっ!?召喚!?」


 確かに、召喚という言葉が聞こえたが周りは何も変化はなかった。


「まさか」


『緑色で半透明ゼリー状のスライム。弱そう

 体長50㌢ぐらい、体重3㌔ぐらい』

 ファンタジー世界ではお馴染みの魔物をネタ帳に書いてみた。


 《スライムを召喚します。スライムを目撃していないので召喚出来ません。》


「なるほど、そういうことか…。面倒だな」


 つまり、この執筆というスキルは異世界ものでいう魔物を召喚するスキルなのだ。

 しかし、召喚するには召喚したい魔物を一度目撃しないといけないらしい。


「取り敢えず、魔物を探して戦力強化。命は大事に!後は、自分のステータスが見られればいいんだけど…おおっ」


 目の前にお馴染みのステータス画面が現れた。

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 名前/乃田 翔吾

 年齢/28歳

 種族/人族

 HP/30

 MP/20

 攻撃力/12

 防御力/6

 魔力/20

 魔防力/8

 スキル/執筆Level1 観察Level1

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  一目見て思ったことは、良いのか悪いのか判断の付けようがないステータス。

 だが、自分のステータスが分かるのは有り難い。

 色々と見ていると、また地面に影ができる。

 さっきのドラゴンが戻ってきた。

 ドラゴンは旋回を繰り返すと、此方に向かってきているようだった。

 

「や、ヤバいヤバい!!どこかに隠れる場所」


 しかし、今いる場所はだだ広い草原。背の高い草や岩も無く隠れる場所はない。

 咆哮を上げ口の端からは炎がチロチロと上がり、目は正しく俺を獲物として捉えていた。

 どんどんと距離を近づけてくるドラゴンに全速力で逃げた。


「くくくそ、に逃げて走ってばかりじゃんかー」


 恨み言を唱えながら死ぬ気で走っていると目の前に深い深い森が見えた。森に逃げても逃げ切れる気はしなかったが後ろのドラゴンと戦うよりはマシだという考えに至り森に逃げ込む。

 幸いドラゴンは雄叫びを上げるだけで森の上を数度旋回すると元の方向へと帰っていった。


 逃げるのに夢中で気が付かなかったが奥深くまで入ってしまったらしく、周りは高い木々や生い茂る草ばかりで道がなく、獣の唸り声や木々が風になびく音しか聞こえてこない。

 ちょうどあった大木に空いた木の洞で休憩する事にした。


「なんなんだよ、クソクソクソ。最初からあんな大物倒せるわけないじゃん。スライム連れてこいよ!スライム!」


 悪態を吐いていると、草むらからガサガサと音がしていて緊張が走る。あのドラゴンが追ってきてないとはいえ、ここは森の中。他の魔物がいるかもしれない。

 なるべく、奥に入り身を小さくして身体を隠した。

 ガサガサガサガサと大きくなり薮から出てきたのはまたファンタジー界ではお馴染みの魔物だった。


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