第ニ編 気分も俺も落ちてます。
皆さん、初めまして。二回目です。
俺の名前は、乃田翔吾 28歳です。
将来の夢は、超大物小説家になって在宅勤務希望。
まぁ、要は俺の書いた小説が売れて売れてウハウハな人生を送りたいのよ。
あくせく働くって性に合わないしね。
だから、今流行りの異世界物でも書いて一発当てたかった…そう、過去形です。
俺はどうしてこうなってるのか?
それは前のページを読んでもらえれば分かるからここでは割愛させて欲しい。
俺は周囲を注意深く伺ってみた。穴の中はあちこちにあるランプや電球のおかげか思ったより明るいし、両手を伸ばしても壁に触れることはないぐらい広い。
穴の壁にはスピーカーが等間隔で設置されていて、ときおりある窓には草原や森、火山、雪山等の景色があった。
そして、もうかれこれ二時間ぐらいは落ちていると思う。
底は真っ暗な空間が延々と続いているのかまだ着きそうにもない。
「っていうか、このまま底に着いたら駄目なんじゃ…俺…死ぬのか…」
背中から脂汗が噴き出してくる。
しかし、身体はどうしようもなく重力に引っ張られるかのように落ち続けていてどうしよもない。
まさに、気分も俺も真っ逆さまw笑えない。
「あーあー、マイクテスマイクテス。」
そのとき、確かに壁のスピーカーから間の抜けた声が聞こえた。
「……………………。」
「聞こえていますかー?」
「…………誰だ!」
「良かったー。声は届いているようですね。
ようこそ、お越しくださいました。
本日は私共がお届けする異世界ツアーにお越し下さいまして誠に有難う御座います。」
「い、異世界ツアー!?」
間の抜けた声はおかしな事を言い始めた。
遂に、俺は落ち続けておかしくなったらしい。
「はい、それでは旅のご説明を「ちょっと待て」
…ハイ、何でしょう?」
「何なんだよ、異世界ツアーって。わけわかんないやつにカバンは盗まれるし、そいつを追いかけたら穴に落ちて俺は今大変な状況なんだよ。くだらない冗談は止めろよ。」
俺は叫んだ。どうしようもないこの状況にイライラしていたんだ。
「あのー、つかぬ事をお聞きしますが…お客様は副島健太様では?」
「違うよ、乃田翔吾だよ。」
「………少々お待ちください。」
そう言うと声は遠くでボソボソと誰かと話している。
「ちょっとー、連れてくる人を間違えてるよー。
誰だよ連れてきたのー……で、どうすんのーコレ……こっちは知んないよーそっちのミスじゃん?うん?うん!う、、、、うわぁ、メンドくさー」
大変めんどくいさい事になったと言わんばかりのその声にちょっとだけ冷静になれた。
「めんどくさいとかなんだよ。腹立つ」
「…失礼しました、乃田様。どうやら此方の連絡ミスのようで違うお客さまと勘違いしていました。」
「それじゃあ、今すぐ元の場所に帰して欲しいんですけど。」
「それが、当旅行会社はクーリングオフ不可となっております。」
「ハァーーーーーーッ」
驚きの表情でマヌケな声を出していた。
よくよく聞いてみると、旅行会社転々シャルシャルは人生に疲れた人を誘い込みうだつの上がらない人生のリフレッシュと言う名の異世界転移又は転生をしているらしい。
普通に誘拐か殺人です、ありがとうございます。
俺が見た少女は入社一年目の新人さんで、間違えて連れてきてしまったということだった。
「とりあえず、こちらの不手際で起こしてしまったのですがやはり規則によりあなたを元の世界に帰すことは出来ないので異世界で困らないナイスでスペシャルなスキルをお付けしておきます。
これで、そうそう行った先で困ることは起こらないかと
後のことをどうするかはお客様次第ですので頑張って下さい。
それでは、乃田翔吾様。素晴らしい異世界ツアーをお楽しみ下さ~い。」
「イヤイヤイヤイヤ、俺を元の世界に帰せよーーーー!!」
声は暗い闇に飲まれながら落ちていく。