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どうなる、俺の異世界執筆活動。  作者: 土塊ナパンナ
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第十六編 教会と帰還方法

お待たせしました。

「草原を向けると、そこは…大きな門の前でした。」


  俺の言葉に、仲間達は三者三様の反応を示した。

 オサカは、俺の言葉を聞いてないのかさっきからホゥ〜とかヘェ〜とかうわの空だし、テンはこっちを汚物のような視線を向けてくるし、キノワは気にした様子は無く手綱を握り締めながら冒険者や商人などが並んでいる入門の列を見つめている。

 余りにもな反応に内心でため息を吐くノーダを置いて、並んでいる列はドンドンと進んでいく。

  そして、遂に俺たちの番になった。

 3人分のギルドカードを提出し、丸い水晶玉の様な物に全員が手を置き何かを調べられた後はテンの事を2、3聞かれ問題無しを受けてやっと門をくぐれた。

  そういえば、オサカの検索でこの町の事を調べたみたいだった。


 《フルカンは畜産業を主に発展し栄えた街である。人口は約3500人程度。3メートルある防壁に囲まれている。冒険者の武器や防具の製作や販売を主とした職人街、冒険者ギルドや冒険者が停まる宿などがある冒険者街、名物のボワボワスモークを販売、家畜を世話する労働者がいる畜産街、フルカンの経済の一端を担う貴族街に分けられており、街民は日々生活をしている。

 主な家畜としてはボワボワ、コッカトリス、ポルスタインを取り扱っている。》


「ソレジャア、オマエタチ、キヲツケテナ。」


「あぁ、世話になった。」

「キノワさん、お世話になりました。」

「怪我をしないよう気を付けて下さいね。」


  俺達はそれぞれのお礼を述べると、ノーダ達と一緒に狩った魔物の死骸を載せている馬車を操り、キノワは片手を挙げて去ってゆく。

 さて…どうしようか…。


「ねぇ、この後どうするか考えてるの。」

「……えっと、どうしようか。」


  テンの言葉にオサカが答える。

 とりあえず、町には来たが俺達の目的は旅をしたいと話はしたが、別段目的のある旅ではなかった。

 しかし、その行き当たりばったりを許せない人物がいるらしい。


「嘘でしょう、信じらんない!これからの計画も立てて…」


 おかんむりのテンに合わせてあの声が頭の中で響く。


(お前さん達、教会に行ってみなさい。旅の目的が出来るかも知れんぞ。)


 そう、変な扉のノカ爺だった。

 って言うか、ノカ爺はこんな事もできたのか。残りの2人も少し驚いたようだった。

  3人はどうするか意見を交換し合ったが良い案は浮かばずに結局、ノーダ達はノカ爺の言葉を採用して教会に向かう事にした。

  と言っても、教会を見つける事はとても簡単だった。何故なら目の前にあるから。


「大きいねぇ〜」


 周りの家屋や建物は精々1階や2階建てなのに対し、この教会は3階建て。しかも、窓は色取り取りのガラス、ステンドグラスがはめ込まれドアも大人が並んでも余裕がある大きさ、白い壁には何かの紋様が刻まれている。


「凄いな。」


 向こうの世界の教会を見た事ある俺からしたら、何でもないのにどうしてこの世界で見るとこうも感激するのだろうか。ノーダはそんな感慨深い想いに浸っていると後ろでヤジが飛んでくる。


「ちょっと、こんなとこで止まらないでよ。邪魔じゃない。」


  情緒もへったくれも無い女だ。などと悪態を吐きながら進むと、正面には男性を象った像があり両隣をショートソードを胸の前に持つ男性の像、大盾を足元に置く女性の像、杖を頭上高く持つ女性の像、本を開き読んでいる男性の像が安置されている。

 ちらほらと礼拝に訪れている人はそれぞれの像の前に座り、熱心に祈りを捧げている。

 木製の箱を持った信者は訪れている人達を回り寄付を募ると、参拝者は銅貨を入れているようだった。

  俺達もそれに倣い、信者に3人分の銅貨を渡す。


「あの、ちょっといいですか?私達、初めてここを訪れるんですけど誰を祈ればいいでしょうか。」

「それでしたら、創造神様がよろしいと思いますよ。この世界をお作りになられた方で全ての人を見守っているのです。」


 信者の人は正面の男性像を示している。


「ありがとうございます。」


 俺たちは、男性像の前まで行くと参拝者と同じように跪き祈る。。


「……………。」

「…………。」

「………。」

「…ねぇ、チョット…聞いてるの!」


  バッチーン!

 そんな軽快な音と同時にノーダの頬に痛みが走る。


「いって-!!お前なにすんだよ!!!」

「あれよ、あれ見てよ。」


 抗議の声を上げるノーダの目におかしな物が映る。


「なんだよ、あれ?」

「私が知るわけないじゃない。」


 ノーダとテンのやり合いにオサカの声が被さる。


「何って、黒電話ですよ?」

「黒…電話?」

「あれって、電話なの!」


 台の上に黒く丸いフォルムに大きな受話器、数字が書かれた今は珍しいダイヤル式。

 黒電話が乗っている台には、

 [お客様サービスセンター ××ー×××ー××××]と書かれてある。


「…私、使えないわよ。」

「悪い、俺も。」

「それなら、僕がやります。」


  オサカは慣れた手つきで、台に書かれている番号を回す。

 ジリ、リリリリリリリ

 ダイヤルを回して数分、陽気な女性の声がオサカの耳に届く。


「御電話ありがとうございまーす。こちら、転々シャルシャルお客様サービスセンター担当の恋愛神でーす。」

「れ、恋愛神?」

「はーい、この世界の神様やってます恋愛神でーす!一応、確認の為に貴方のお名前宜しいですか〜?」


「えっと…お、オサカです。」

「オサカ様ですね〜…お、お、おさ、確認が取れました。逢坂健太様、今日はどの様な御用です?」

「こ、ここに来れば、僕達の旅の目的を見つけられるかも知れないとノカ爺に聞いて電話しました。」

「ノカ爺…逢坂様、担当の者をお呼びますので少々お待ち下さいね。」


  陽気な緊張感のない声で誰かを呼んでいる。

 数回の呼び声の後、青年と言える歳ぐらいの男性の声が聞こえる。


「お電話代わりました。転々シャルシャルお客様サービスセンター主任の創造神です。本日はどのようなご用件でしょうか?」

「…えっと、ノカ爺に旅の目的が見つかると言われて電話しました。」

「……なるほど、分かりました。お手数ですが逢坂様。黒電話の中央部分を押して頂けますか?」

「えっ?あっ、ハイ。」


  オサカはダイヤルの中央部分に触れると、残りの2人にも電話の声が聞こえた。


「改めまして、私は転々シャルシャルお客様サービスセンター主任の創造神です。」


 電話から聞こえるその声は何処かで聞いたような記憶がある。

 何処だったけ?


「ちょっと、今すぐ私を元の世界に帰して!!」


 テンは電話の主に怒鳴りつける。

 しかし、その怒鳴り声もなんのその義務的な返事が返ってくる。


「申し訳ありません、天皇寺様。今すぐにと言うのは、こちらでは出来かねます。」

「なんでよ!私は…私はやらなきゃいけない事があるの!」


 それは何処か悲痛な叫びの様に聞こえた。

 しかし……今すぐには…。


「質問なんだが、元の世界に帰る方法はあるのか?」

「乃田翔悟様ですね。勿論、当社は旅行会社ですので、元の世界に帰る方法は御座います。

 但し、帰れるかはお客様次第となっております。」


  どういう事か詳しく話を聞くと、元の世界に帰る為には、この世界の何処かにある『異世界帰還の書』という本を探さなくてはならない。しかも、その本の所在が分からず、最期に確認出来たのがブルジョアン山脈にある首都『カネモミ』にあったという。

 どうも、胡散臭い。…果てしなく、胡散臭い。


「申し訳ありません、乃田様。どんなに、胡散臭くても当社の規定となっておりますので頑張って下さい。それでは、失礼致します。」


  言うだけ言った電話の主は用は終わったとばかりに電話を切った。

 隣は、怒気を孕んだ顔で体の周りは轟々と炎を上げ燃えている女がいる…メチャクチャ怖い。


「と、と、とりあえず、こ、ここの冒険者ギルドにい、行きません…か?」


 隣の男子はまるで世界の終焉を目撃したかの様な顔をしながらも必死に般若女を宥めている…健気だ。


「……前途多難だな。」


 当の本人に出来る事は、只々肩を落とし呟くしかなかった。


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