繋いだ手は暗中を彷徨う_1
「お久しぶりです、お兄様・・・・・・」
おずおずと礼をする私にマグナは僅かに眉根を潜める。
「ああ、息災で何よりだ」
戸惑いを含んだ声に、私は顔を伏せる。
マグナが戸惑うのは当たり前だ。
シオンなら、マグナを見たら、走り込んで抱き付く。
兄様、と叫びながら。
でも、私にとって、彼は知らないイケメンで・・・・・・
『絶対、無理っ!』
一瞬、精一杯、シオンを演じようかとも思ったけれど、
記憶をよくよく探ってみて、すぐに断念した。
マグナとシオンの関係は、
飼い主とご主人大好きな飼い犬のようなもので・・・・・・
何もかも見通すようなマグナの目と、
マグナの後ろで心配そうな顔を隠さないナールの二対の目に串刺しにされ、
私の心臓は限界まで暴れ、じっとりと嫌な汗さえ浮かぶ。
その時、緊張で微かに震える私の身体が暖かさに包まれる。
「久しぶりですね、マグナ殿。
彼女はとてもよく勤めてくれています。
私は彼女を正妃として迎えられて、幸運でした」
ニコニコと私の肩に腕を回すサークリットのフォローで
気まずい空気はいくらか和らぐ。
だが、所詮、付け焼刃の演技。
サークリットが仲良しアピールのため、更に私の身体を引き寄せようとした瞬間、
私の身体はビクリッと跳ね、無意識に身動ぎ、彼から僅かでも遠ざかろうとする。
そんな私たちに思う所があるのだろう。
マグナはその鋭い視線を更に尖らせ、私たちをジッと見つめる。
サークリットはそれでもニコニコと笑みを絶やさないが、
私は吐きそうな程、気分が悪くなっていた。




