始動_5
クルクル、クルクルクルと回る世界。
この国の男達に比べれば、頼りなく見えるその身体。
それでも、立派な男の身体。
しっかりと腰を支え、安定したリードで私を振り回しながら踊るナール。
『あぁ、”シオン”はこういうのがスキだったね・・・・・・』
フフフッと少女のように笑みが溢れ、心もワクワクと弾む。
子どもの頃から我儘なシオンを唯一扱える者として世話係を務めたナールは
シオンの扱いに誰より長けている。
子どもっぽく我儘で気分屋。
でも、楽しい事が大好きなシオンは根に持つタイプではない。
心躍る事があれば、少し前に起きた不機嫌な事などすぐに忘れてしまう。
そんな単純で、無邪気な子ども。
それを知り尽くしているナールは今、シオンを慰めようとしているらしい。
何曲も2人で踊って、楽しんで、疲れと火照りを癒すためにバルコニーへ出る。
ナールが途中でさりげなく手配した果汁水を飲んで、ふぅと溜息をもらす。
「・・・・・・少し変わりましたね、姫様・・・・・・」
ナールのそんな言葉に苦笑する。
少しどころじゃない。だって、人格が変わったのだから・・・・・・
だけど、何と答えても嘘になるから、私は苦笑するだけ。
そんな私の髪をソッと撫でて、ナールは慈愛の籠った眼で私を見つめる。
「・・・・・・お辛いのでしたら、いつでも帰ってきてよいのですよ?
殿下には私がうまく言いますから・・・・・・・・・・・・」
思わぬ言葉に目をぱちくりする。
だって、これは兄が仕組んだことなのだ。