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始動_4

アドリアンにエスコートされて入った晩餐会は大変居心地の悪いものだった。


新婚から愛想を尽かされている正妃と皆が嘲っているのが分かる。


だがな、と私はそんなその他大勢に心の中でメンチを切る。

『・・・・・・孤児のど根性、なめんなよっ・・・・・・』


にこにこと武装の笑みを絶やさず浮かべ、挨拶を続ける私は

どこにでもいる平和そうな、幸せ真っ盛りなお姫様。


皆が虐め甲斐がない、と1人、また、1人と撤退していくのを

たった一人で捌ききった私は自主休憩に入った。


チラチラと視線を彷徨わせ、食べれそうなモノを探していると

スィッとシオンの好物であるサフンというフルーツの乗った皿が差し出された。


皿の持ち主は平凡だが、優しそうな顔に穏やかな笑みを浮かべる赤毛の男性。


驚きのあまり、思わず、勝手に言葉が口から飛び出る。

「ナルっ?!」


彼の名はナール・クレマルド。

ウードランドの伯爵家次男で、兄の側近の1人。

そして、ウードランドに居た頃のシオンのお世話係。



「姫様、ご無沙汰しております」


ニコニコといつも通りの笑顔を浮かべるナールから

サフンを有難く受け取って、一口口にする。梨に似た味がした。


喉がカラカラでした。

誰も飲み物一つくれないのです。ヒドイよね?


お世話係だったナールはちゃんと果汁水も用意してくれてあって・・・・・・


人心地ついた私はナールに尋ねる。

「なぜ、貴方がここに?」


はい、とナールは頷く。

「マグナ様の代理でお祝いに参りました」


マグナとはシオンの兄で、ウードランドの王太子。

正妃の子どもはマグナとシオン2人なので、実の兄弟は2人きりだ。


だが、側妃の息子、娘は他にもいるし、王太子のマグナは別枠で育てられたので

異母兄弟たちよりシオンにとってずっと遠い存在だった。


というか、私が記憶から察するに

我儘放題のシオンをマグナは下に見ていたように思う。


シオンはそんな兄を心から尊敬し、慕っていたようだが・・・・・・



そう、と答えたまま、ぼんやりしてしまった私からグラスを取り上げ、

ナールは左手を差し出す。

「姫様、宜しければ、一曲お相手頂けますか?」


え・・・・・・、と私は戸惑う。


どれほど蔑ろにされようと、私はサークリットの正妃だ。

ダンスの相手など、気軽に受けて良いものなのか判断がつかない。


そんな迷いを払うように、ナールはチラリと視線で示す。

「大丈夫ですよ、姫様。誰も気に留めませんから・・・・・・」


ナールの視線の先にいたのは

身重の寵妃を大切に抱き締め、幸せそうに踊る夫の姿。


『・・・・・・それも、そうね・・・・・・』


フッと笑みが漏れて、私はナールの手に自分の手を重ねる。

「楽しませてね?」


もちろんです、と頷くナールの笑顔に久しぶりに心から微笑んだ。


##補足##

ちなみに、各キャラの詳細を。

名前    :年齢 (キャライメージ)

―――――――――――――――――――――――――

マグナ   :25(ピットブル)

ナール   :23(ピーグル)


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