サークリット_21
「この国にはウードランドとの確かな絆となる御子が必要です。
そのきっかけをマグナ王太子が作ってくれた。
そして、因縁の残るこの国へシオンは身一つで来てくれた。
その上、
シオンはこの国のために必死に自分の出来る事を探し、努めてくれている。
貴方はこの上、あの子に何を求めます?
あの子のどこが正妃として、王妃として、何が足りえないと言いたいのですか?」
王妃の言葉は正しい。正しい故に飲み込めない。
キキタクナイ、と言う様に、サークリットは目を閉じる。
「そもそも、アレは事が済めば返す、その約束に置いて招いた者です。
ですから・・・・・・」
「お黙りなさいっ!」
王妃が怒声を上げるなど、初めて見せるその姿に、サークリットは目を丸くする。
「約束?どこにその証文はありますか?誰とそれは交わしたのですか?
つまらない言い訳を重ねるのもいい加減になさいっ!情けないっっ!!」
いいですか、と
怒り心頭の王妃はずっと飲み込んでいた全てを吐き出すように叱り付ける。
「初夜に貴方がした事、私が知らぬとでも思っていますかっ?!愚か者がっ!!
あのまま、彼女が母国へ帰っていたら?万が一、儚くなってしまっていたら?
貴方は貴方のつまらない意地で
この国を死地にするつもりだったのですかっ?!!」
悪さを知られていたと分かったサークリットは
バツが悪くて、叱られた子どものように王妃からソッと目を反らす。
そんな息子に母としてではなく、王妃として彼女は最終通牒を告げる。
「貴方がどうしても王太子としての責務を果たせぬと言うなら、
もうこれ以上何も言う事はありません。
ですが、シオンはアドリアンと番わせ、アドリアンにこの国の未来を託します。
貴方は愛玩動物と共に臣下に降りなさい」
なっ、と言葉を失い、真っ青になったサークリットを
冷たく一瞥した王妃はもう興味がないというように、息子に吐き捨てた。
「既に陛下も、そして、ウードランド王もこの件について了承しています。
後は貴方次第です。私はもう貴方に何も言う事はありません」




