動き始めた時_4
それから暫く、療養と言う名の軟禁生活が半年以上も続いた。
協会から届く報告書に目を通すのがもっぱらの仕事になりつつある。
「・・・・・・もう、私の手は必要ないかもね・・・・・・」
孤児育成協会はもう組織として完成した。
後は、腐らせないように適度に見張って行けば、十分、やっていけるだろう。
そう気付くと、ぽっかり胸に穴が開いたような気分になる。
貧乏暇なしと言う言葉がぴったりな前世を送ってきた私は
仕事をしていないと落ち着かない。
天涯孤独ということで小学校から新聞配達をしていた。
中学に入ると、
ラーメン屋の洗い場や就職先になった仕出し屋の仕事も始めた。
働いている間は将来への不安から逃れられるから、
自分より恵まれた誰かを羨まずにいられるから・・・・・・
だから、私はただひたすら働いた。
可哀そうと憐れまれても、金の虫と嘲られても・・・・・・
ふぅ、と溜息をついて、書類に額を付け、ペタンと机に突っ伏す。
行儀の悪い事だ。
クローバ夫人に見られたら、あのとんでもなく撓る鞭で手の甲を叩かれるだろう。
『あれ、マジで痛い・・・・・・、体罰反対』
「・・・・・・何、しよっかなぁ・・・・・・」
まだまだ続く人生。そして、ココから抜け出す事は出来ない。
ココに居る事が今の私、シオン・アースランドの役目。
皆が疑問を持たない程度、誰からも文句が出ない程度生きて、
そして、この国に骨を埋める事が一番大事で、重要な私の役目。
後は、何をしていようが、何もしなかろうが、誰も興味がない。
シオン・アースランドはそう言う存在だ。
そう分かっているから、余計、我儘を言い辛い。
はぁ、とまた溜息が漏れて、目を閉じる。
もうそろそろ、マゼランからも公務の許可が出るだろう。
「・・・・・・本当に、何しようかなぁ・・・・・・」




