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動き始めた時_3

「許可できません」


そうきっぱり言うのは私の担当侍医の青年、マゼラン・スペイド。


御子の生誕祭の後、結局、私は二日間、目を覚まさなかった。


原因は胃の不調。

大臣の方々によく診られる症状が私にも出ているらしい。


要するに、ストレス性胃炎。

しかも、程度で言えば、重症クラスらしい(笑)


それを東洋医学の脈診に似た手法で突き止めると言うのだから、

この国の医療関係者は検査機器に頼りっきりの前世の医者達より余程優れている。



日々の公務による疲れもあるが、

アレルギーによる偏食で、フルーツばかり食べていたのも胃に負担だったようだ。


野菜が豊富なウードランドと違い、肉食中心のアースランド。


我儘を言って、ウードランドから取り寄せれば、

食べられる食材は多いが、アースランドで探そうとすると限られてくる。


何となくだが、シオンの身体は動物性の油にアレルギーがあるようだから。


それでも、十分胃を休めた後、

食べ物の種類を増やし、量も増やすとマゼランに宣言されれば仕方ない。


ウードランドに連絡を取って、

シオンの身体が受け付ける食材を運んでもらう事で話はついた。



『あーぁ、また、我儘姫と言われそうだ・・・・・・』


公務に励み、なんとか認めてもらえるように頑張ってきただけに

このマイナスは地味に痛い。


とにかく、孤児院だけは通い続けたいと思い、マゼランと交渉する。

「・・・・・・自分の状態は分かったのだけれど、私にも予定が・・・・・・」


「予定だろうが、なんだろうが、許可できません」


けんもホロロなマゼランは護衛騎士たちより難敵。

彼らは最低限、献言という呈を崩さなかった。でも、マゼランは違う。



『さすがは”お医者様”』


顔を引き攣らせる私をジッと見て、マゼランは言い切る。

「私には貴女様の健康を守る義務があります。

そして、今の貴女様の身体は公務に耐えられる状況ではない、と断じます」


むぅっ、と口を尖らせる私にシャルリーゼが心配そうに言葉を重ねる。

「こちらに興し入れて一年半、シオン様は目に見えてやつれていらっしゃる。

どうか、ご自愛ください」


いつもいつも良くしてくれるシャルリーゼの潤んだ目を見ると、

それ以上、我を通すのは躊躇われて・・・・・・


「分ったわ。でも、私が行く予定だった孤児院に・・・・・・」


そう言いかけた私の言葉をムジカが遮り、報告する。

「既に連絡済みで、

代わりの方々からも、よくよくお休みください、とのことです」



いつもながら、実に手回しの良い事だ。孤児育成協会に連絡したのだろう。


”孤児育成協会”

私が派遣会社を思い出して適当に作った組織は、王宮の部門すら飛び出し、

たった一年ほどで神殿管轄の独立機関にまで成り上がった。


お蔭で協力者が増え、出来る事も増え、イイこと尽くめだ。



ありがとう、と微笑むと、ムジカは厳つい顔を少し和らげて

(これがムジカなりの満面の笑みと最近分かった)いえ、と答えてくれる。


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