始まり_3
ベルを鳴らすと、記憶通り、侍女がシズシズとやってきた。
彼女が言うにはこの身体は9日眠ったままだったらしい。
もちろん、誰も見舞いに来ておらず、
何度か侍医は診ていて、疲労と診断されたらしい。
『・・・・・・ここにも、家族はいないのね・・・・・・』
思わず、自嘲を漏らすと、ビクリと侍女が怯える。
そんな彼女に私は言い辛いお願いをする。
「・・・・・・えっと、あ・・・・・・、傷、くすりを貰ってきてもらえる?」
前世も処女だったし、よく分からないが
今もズクズクと痛み、下着を汚す血の量から見て、これは異常だと思う。
化膿でもして、こんなコトが元で死ぬなんて、絶対にイヤだ。
だから、恥を忍んで、真っ赤になって、頼む。なのに。
「では、侍医の方をすぐに・・・・・・・・・」
それはいいからっ、と私が大声で止めると、
ビクッと身体が跳ねる程怯えるから、自分の嫌われ具合に地味に傷つく。
だが、花も恥じらう16才。
侍医って多分男性。男性にそんな場所を診られるなんて・・・・・・
例え、本来の自分の身体でないにしても、考えただけで今すぐ死にたくなる。
「・・・・・・あ、の・・・・・・、下が・・・・・・、
その、ちょっと、痛い・・・・・・だけ、だから・・・・・・薬、だけでいいから・・・・・・」
恥ずかしくて、恥ずかしくて、
何とか自分の希望を言うと、彼女は素直に応じてくれた。
その後、人の手によって身体中を洗われる”湯あみ”と言う名の羞恥プレーに
『これは病人介護』と自分に言い聞かせる事で耐え抜き、心身共に疲れ果てる事を
この時の私はまだ知らない。
その上、苦行を乗り切った後に、
塗り薬をお塗します、と言う更なる苦境に立たされた私は
お姫様を演じる事を早々に諦めた。
何度も言うが、花も恥じらう16才なのだ。
私と言う意識がある状態でそんな事耐えれるわけがない。
なので、食事代わりのフルーツを用意してもらった後、
独りにしてくれ、と怪訝な顔をする侍女達を追い出す。
人にあれこれ世話を焼かれるのがどうしても落ち着かない。
シオンとして生きていくには最低限の事には慣れねばならないと思いつつ、
今日は考えたくないと、バフンとベッドに倒れ込んだ。