サークリット_12
※女性蔑視の表現があります。ご注意下さい。
こいつだ、とサークリットはその光景を目にするまで
一度も頭に上らなかったその男の事を一瞬で思い出した。
平凡な顔立ちで、その他大勢に紛れたら区別がつかないような程度の男なのに
サークリットはその男を覚えていた。
ウードランドに交流の一環で何か月か滞在した時、何度も見かけたのだ。
その男の馬に当たり前のように同乗し、その男と遠駆けを楽しむシオンを、
疲れたからとその男に抱き上げるようにねだり、その腕に収まったシオンを、
その腕の中で安心しきって眠るシオンを・・・・・・
そして、
そんなシオンをこれ以上ないほどの優しい目で見つめ、寄り添うその男を。
『この少女はこの男と番うのだろうな』
その時、そう思った事まで思い出す。
それにも関わらず、晩餐で出会ったシオンは自分に一目惚れしたと言い出し
しかも、
その男の袖を心細げに掴んだまま、シオンはサークリットに好意を示したのだ。
さすがのサークリットも顔が引きつりそうになった。
そして、そんなシオンをにこにこと見ていられるその男も大概気持ち悪かった。
そんな、サークリットにとって曰く付きの男に
人目も憚らず、抱き付き、泣くシオンを見て
心が侮蔑と嫌悪で煮え、対照的に、頭は冷えた。
『いいだろう、とことん、付き合ってやろうじゃないか・・・・・・
・・・・・・この茶番に・・・・・・』
自分に好意を寄せる男の存在を利用しながら、
自分の欲する男の愛や心を求める女のあざとさや貪欲さが醜悪な女の本性。
サークリットはとことん、”女”という生き物が嫌いだった。
そして、シオンも”女”だった。それだけの事。




