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サークリット_10

「どうしても耐えられぬか?」


全ての段取りを整え終え、ベルリンとの婚約破棄を申し入れた時

国王である父にそう重ねて尋ねられたが、サークリットはきっぱりと頷いた。


もうベルリンを己の生涯のパートナーとする事は

何があっても受け入れられなかった。


分かった、と頷いてくれたのは、多分、それが

サークリットがした二度目の我儘だったからだろう。



そんな幾つもの偶然と、様々な人の色々な思惑が重なり、

一旦はシオンをこの国に迎え入れたが、

シオンが帰国と願えば、すぐにでも解放つもりだった。


ここで王太子妃となるのはその類稀なる美貌で甘やかされ、

王女として誰からも愛玩されてきたシオンには酷な事だ。


王太子妃(王妃)は飾りではいられない。

王太子妃(王妃)は王太子(国王)を支え、

時に、王太子(国王)の代わりに泥を被る事さえある。


しかも、夫を他の女と共有し、その上、その女と夫との間に産まれた子どもを

自分の子どもと分け隔てなく教育しなければならない。


どれほど鉄の意志と鋼の心を持っていても、

夫に真に心を寄せ、その愛を請う女ならば辛いものになるだろう。


それにシオンが耐えられると到底思えなかった。



シオンのような無垢なる存在はどこか穏やかな国、

5大大国ではなく、それでも、豊かな、そして、政治の落ち着いたそんな国の

嫡男以外の高位貴族か、王位継承権を放棄した王族で

シオンだけを大切にし、シオンの自由と幸せを守れるようなそんな男と番うのが

最適だ。


だから、わざとシオンの出迎えにマリアを連れていった。


早々にシオンの排除に動いたのは、

マリアに子どもが出来ていて、正妃を定めるための猶予が伸びたから。


ある事情からマリア以外の御子を設けなければならないが、それは裏事情。

表向きはサークリットに子が出来た。跡継ぎが出来たと示せた事で余裕ができた。


正妃のシオンを娶った後、側妃を幾人か召し上げて、子を作る。


シオンは他国の、しかも、アースランドと同じ5大大国の王女なので、

彼女を娶るまで側妃を幾人も抱えるわけにはいかなかった。


だが、彼女が腰入れた後なら問題はない。


そんな風に算段していたサークリットを嘲笑うかのように、ベルリン同様、

シオンもとんでもなことをしでかす。


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