サークリット_8
ベルリンが子飼の下男に命じ、無法者を雇い、彼らにマリアを犯させ、
その後、男達に暴かれたその身を町中に晒そうとまで計画したのだ。
聞いた時は目眩がした。
その愚かしさに怒りさえ覚えた。はっきりと失望もした。
それでも、未遂だったこともあり、婚約者の犯した罪の責任をとって、
恐ろしい目にあった被害者を側妃として召し上げ、事件は闇に葬ろうと考えた。
だが、結局、そんなサークリットの慈悲も忍耐もベルリンが無駄にした。
連行されてきたベルリンはサークリットを詰った。
貴方が不実なせいだ、と。
大切にすべき自分をこんなにも苦しめたせいだ、と。
そして、泣き喚き終えると、
ベルリンは一遍してサークリットに縋りつき、乞うた。
「これ以上、私の愛を試さないで・・・・・・
私は貴方に愛されないとこんなにも狂ってしまうの・・・・・・
なぜ、貴方は分って下さらないの?
私は貴方だけをこんなになるまで愛しているのに・・・・・・
お願い、私、どんなことにだって耐えて見せますから、
だから、私以外を愛さないで。
・・・・・・陛下が唯一愛する王妃様のために後宮を閉め、
ただ1人の妃としたように、私もただ1人の妃として愛されたい。
私の唯一の願いを、我儘をどうか、どうか、叶えて」
それはサークリットの、唯一の地雷。
その瞬間、国の最善のために我慢しよう、と、
民のために感情的になるべきではない、と
嫌悪しか抱けない相手でも王太子として妃にすべきだ、と
考えていた全ての理性が吹き飛び、
サークリットが常日頃、心の奥底で眠らせている悪魔が揺すり起こされた。
悪魔と化したサークリットは愚かな生贄の前に昏い笑みを浮かべる。
いいだろう、お前のその願い叶えてやる、と・・・・・・




