サークリット_7
だからこそ、マリアとの事に異常なまでに反応するベルリンには辟易とした。
学園に入ると同時に、王族の血を有する男は神殿の務めに携わるのが義務だ。
当然、妃教育を受けているベルリンもそれを知っている。
なのに、神殿にマリアがいるからとベルリンは度々務めの邪魔をしにきた。
それだけじゃなく、
神殿内の一目のある場所で何度もマリアを聞くに堪えない言葉で罵り、虐めた。
己の感情に振り回されるベルリンは、
身内であるマリアを貶められる度、神官達が顔を曇らせるのさえ見えていない。
王家と神殿は建前上、対等だ。
その実情は各王家の庇護下にあるとしても、
創世の竜を神として頂きに据える神官たちは竜神達のみに仕えている。
だからこそ、王家は慎重に神殿との関係を維持しなければいけない。
王家の男子が学園に入るとすぐ、神殿の務めに参加するのもその一環だと言える。
そんな神官たちに不用意に悪感情を抱かせるベルリンの行動は
とても褒められたものではないし、神殿が下位貴族の令嬢にとって、事実上、
見合いの受け皿になっている事を否定する行為でもある。
そう言う事が分からぬ程愚かではないはずなのだが、何度言っても理解しない。
それに、ゆくゆくは正妃としてサークリットの後宮を仕切る事になるのに、
これで大丈夫か、と初めてベルリンの資質を疑った。
それでも、それでも、挿げ替えるなんて考えもしなかった。
なぜなら、ベルリン以上の適任者はこの国に居ないからだ。
王族の血を有すると証明された令嬢で、
自分と釣り合いの取れる年齢、家格、教養など、総合して考えた結果、
ベルリン以外この国にサークリットの正妃になれる令嬢はいない。
だから、多少の事は目を瞑るつもりだった。
だが、そんなサークリットの理性を焼き切る事件が起きた。




