閑話 マゼラン_4
そして、薬草の販売には父が力を貸してくれた。
始めはハイエナのように利をかすめ取ろうとしているのか、と
マゼランは警戒し、反対したが、
紫音が父と手を組む事を決めてしまったため、渋々、従った。
でも、やはり、紫音は正しかった、と後からマゼランは納得した。
父は元からある国外への輸出ルートとは一切関わらず、
薬師たちを相当な資金を投じて掻き集め、
新たなルートを立ち上げてくれたのだ。
そもそも、薬師はフロウランドで学んだ者しか使い物にならない。
だが、薬師たちは情報を秘匿するために、入学時に神殿で誓約まで結ばされ、
薬学を漏らす事が出来ないように縛られる。
もちろん、フロウランドで薬学を学ぶにしても、とんでもない学費が必要だ。
だから、薬師を雇いたければ、法外な契約金を支払い、
彼らを移住させなければならないのだ。
よって、ほとんどの場合、緊急時に備え、
どこの国も優秀な医者をフロウランドに留学させ、学費を国負担とし
数人の薬師を王宮抱えとするのがせいぜい。
とんでもない学費ではあるが、法外な契約金をふっかけられるよりは
それでも、マシなのだ。
そして、そんな希少な宮仕えの薬師は
王族や王城に仕える者達用に作るのが精一杯で、それ以外は、
格段に安く済むフロウランドからの薬の輸入に頼るのが一般的だ。
ただ、アースランドはなぜか、薬草が豊富な土地柄だった。
食用となるような他の作物は中々根付かないのに、
育成が難しく、希少とされる薬草でも、手入れや育成方法を謝らなければ
大体育つのだ。
だが、わざわざ、手間をかけてそれらを育てようと考える者は少ない。
なぜなら、森の中に入れば、わんさと薬草は手に入るからだ。
でも、希少になればなるほど、森奥深くに入らねばならないのは当然で
また、森には多くの魔獣がおり、奥深くに入れるのは高位の冒険者くらい。
そして、高位の冒険者は薬草集めより、魔獣退治の方が稼げるため
年に数回発令される強制依頼で希少な薬草をかき集めるのが常だ。
そうして集めた薬草を買い叩かれ、フロウランドに売り、
高額な薬をフロウランドから売りつけられるという悪循環。
それが悪循環と分っていても、
薬師を雇い入れる法外な契約金を払える者はいないのだから仕方ない。
それは薬師を2人も雇えば、国の年間歳入を越えてしまう程。
だというのに、父は薬師を10人もフロウランドから招いたのだ。
途方もなく、無謀な投資、と商人仲間から揶揄された父。
でも、父はそんな嘲笑に一切気に留めなかった。




