天の岩戸_4(※他視点)
はぁ、と息をついて、ムジカは前に出る。
「彼女を戻す手立てがあるかもしれない、と言ったら、やりますか?」
本当か?!!、とサークリットはムジカに詰め寄る。
ムジカは静かにサークリットを見つめる。
「とても危険で、とても困難で、とてもか細い可能性です。
それでも・・・・・・」
教えろっ、とサークリットはムジカの腕を掴む。
そんなサークリットをムジカがジッと見る。
「戻れたとして、どうしますか?
彼女はこの国、いえ、この世界の者ですらないのですよ。
存在しない者を貴方はどうなさるつもりですか?」
紫音は元の世界で孤児。
いや、そもそも、この世界の者ではないので元の世界の立場は関係ないが。
だが、通常、孤児ではサークリット達王族に近づく事さえ出来ないのだ。
庶民で、しかも、親のいない者を召し上げても、王太子の傍に置く事は出来ない。
でも、サークリットに迷いは一切なかった。
「もちろん、私の妻にする」
断言したサークリットの目には確かに理性の光があった。
「もし、彼女の存在を、王が、この国が、私の妻と認めぬなら、
相応しくないのなら、私が国を捨てる」
兄上、と辛そうにするアドリアンに、サークリットは静かに目を閉じる。
「彼女は・・・・・・、
紫音は沢山の事を、私に、そして、この国に遺してくれた。
この世界のために、命さえ、捧げてくれた。
そんな彼女を、この国が、妃として不適当と言うならば、
そんな国より、私は紫音を取る。
私は、私1人だけでも、紫音の献身に報いる。
紫音を護り、紫音の家族となるためだけに、この命を使う」
元より、とサークリットは晴れ晴れしい顔を初めて見せた。
「私は既に廃嫡を申し出、王席を出る身だ。
私が妻に誰を選ぼうと、誰にも何も言わせぬよ」
分りました、とムジカはほんの僅かに口角を上げる。
そして、クイッとバジルクに合図を送るムジカ。




