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天の岩戸_3(※他視点)

机の上に置いた籠の中で柔らかな布団に寝かされている黒い仔猫に

バジルクが近寄る。


すると、サークリットはどこからその力が湧いたのかと思うほどの瞬発力で

バジルクを突き飛ばし、黒い仔猫の前に立ちはだかる。

「・・・・・・近寄るなっ・・・・・・」



背筋がゾッとするほどの低い声と、喉元に突き付けられるような殺気。


目の前にいるのは、アースランドの守護神と名高い王子ではなく、手負いの獣。


それは剣士より、理性がない分、余程恐ろしい。



ふんっとバジルクは鼻で笑う。

「ソレに彼女はいないよ、ソレは竜の力の残骸。


そこにはもう、彼女の魂はないんだ。無意味なモノを護ってんじゃねーよっ」


ウルサイッ、と怒鳴ったサークリットの目はギラギラと狂気が宿っていた。



はぁ、と溜息をついたムジカ。

「バジルク、いい加減に憂さ晴らしを止めて、本題に入れ。


・・・・・・・・・・・・埒が明かん・・・・・・・・・」


口のへの字にして、バジルクは不服を示す。

「そんな、簡単に許して堪るかっ!


このガキがぼぅっとしている間に、

俺はテン族の石頭じじぃとスイ族の偏屈ババァの所で

嫌味をこれでもかと言われてきたんだぞっ、全く、あのじじぃ共が・・・・・・」



はいはい、と言わんばかりに頷くムジカ。

「その代わり、私はホムラのトコに行ったし、

アース王の手の込んだ親書を携え、親父が各国の腹黒王の所に廻っただろ?」


分ってるよ、とバジルクは噛みつく。

「ただ、ぶん殴ってやらなきゃ気が済まなかっただけだよっ!」


もう十分殴っただろ?、と呆れ気味に返され、プイッとバジルクはそっぽを向く。

「したけりゃ、お前が説明すればいいだろ?俺はヤダ」


本当にサークリットを殴りつけるためだけに

自治区再興や紫音の指示書の手伝いでとんでもなく忙しい癖に、

態々バジルクはここまで来たらしい。

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