表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
182/202

悔恨_5(※他視点)

「本日は、時間を頂き、ありがとうございます」


そう言って頭を下げるサークリットの顔には生気はなく、いつも、

その強い意志を示すかのような輝いていたその目には一切の光を感じない。


その姿を見て、集まった彼らはサークリットの憔悴具合を察した。


だから、その腕の中に大事そうに抱かれている黒い仔猫を見ても、

誰も何も言わなかった。



「身体は、大丈夫なのですか?」


思わずと言う様子で、尋ねた王妃に、サークリットは淡々と頷く。

「はい、問題ありません」


王妃を写さない、その、空洞のようなサークリットの目に

王妃の顔は僅かに歪み、必死に泣くのを堪えているようだった。


そんな王妃を庇うように、国王が声を掛ける。

「それで、話したい事とは?」


はい、とサークリットは今度はその目で国王を見た。

「私を廃嫡にし、王族からも除籍して下さい」


「「「「「「「っっっっ!!!!!!!!!!!」」」」」」」



皆が驚愕で固まる中、サークリットは淀みなく言葉を並べる。

まるで、初めから与えられた文言を口にする人形のように、淡々と・・・・・・


「私は、私の妃を護る事ができませんでした。


そして、もう、彼女の願い(和平協定)を叶えてやる事もできません。


そんな私には王太子として立つ資格はありません。


そして、妃を失った今、王族である必要もありません。


ですから、私を廃嫡し、そして、王族からも席を外して頂きたい」



そ、そこまでは、と国王は王冠を戴いてから、初めて、言葉を詰まらせ、

感情が先に立ったように、父として言葉を吐き出す。

「必要ないっ、そんな、そこまで、お前が背負う必要などないっ。

これは、これは、お前の罪では・・・・・・」


いえ、とそんな国王をサークリットは遮る。

「私はもう、立ち上がる事が出来ぬのです」


その言葉についに決壊したように、王妃が泣き崩れた。


そんな王妃をアドリアンが支える。


サークリットは王妃を見る事さえせず、淡々と続ける。

「贖えぬ罪を抱え、犠牲を胸に押し込め、悔やむ事も忘れ、

この国の芯として立ち続ける、その意思が、その気概がもうないのです。


私にはもう、王族の業を背負う覚悟が、柱としてこの世界を支える覚悟が

もう、ないのです」



静かに告げられた言葉に、サークリットの決意の深さが垣間見れて、

皆、言葉を失っていた。


それでも、彼らはまだ、

サークリットをこの国に繋ぎ止める事が出来ると信じていた。


サークリットの次の言葉を聞くまでは・・・・・・



「それに、私は、この国が疎ましい。この世界が憎い。


私の最愛を認めなかった、

私から最愛を奪った、この国を、この世界をもう愛せない。


・・・・・・・・・出来る事なら、この手で壊してしまいたいっ・・・・・・・」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ