悔恨_4(※他視点)
その日、1か月ぶりにサークリットが国王への謁見を申し出た。
何日か、サークリットの私室でタロと2人で過ごしたサークリット。
昨夜遅く、タロが王城を出たという知らせは聞いていた。
タロの励ましによって、ようやくサークリットが立ち直った、と
皆が胸を撫で下ろし、国王夫婦、シンマルマにベオウルク、
そして、アドリアンまで揃って、サークリットの訪れを待っていた。
事の顛末を聞いた国王夫婦は余りの事にサークリットの好きなようにさせようと
一旦は放置したものの、サークリットが食事すら取らず、
まるで、死が訪れるのをただ、待つかのように動かなくなって、焦った。
竜の力を持つ伍竜家の者程でなくとも、加護持ちはその魂の強さから
強靭な肉体を持ち、数か月、絶食しても生き延びる事は出来る。
その上、サークリットは最強の加護持ち。
1,2か月、人形のように、時を止めても、身体に支障はない。
それでも、これは異常事態に違いなかった。
だから、国王は最後の賭けに出た。
やはり、タロに頼んで良かった、と国王と王妃は
久しぶりに直接言葉を交わす事の出来た自分たちの長男に感謝の念を送った。
国王にとっても、王妃にとっても、血の繋がりがどうであろうと
間違いなく、タロは彼らの第一子なのだ。
そう思って、2人ともタロを育てていたし、
成人前に手元から送り出さねばならなかったけれど、
今でも、変わらず、大切な息子なのだ。
マリアの事を初めから相談してくれていたら、と国王達は思った。
もちろん、アドリアンをどうこうするつもりはないし、
また、タロから居場所を奪うような真似をするつもりはない。
必要とあれば、王家の秘術を使って、マリアの記憶を封じてでも、
息子たちを親として守る気概くらい、2人にはあった。
それでも、タロやサークリットが相談しようと思えなかったのが、
頼ろうと思えなかったのが、それが自分達の行いの結果なのだ、と受け止めた。
親たちの諍いのしわ寄せを食らい、
その罪を理不尽に押し付けられた子ども達の事を思うと、国王達は堪らなくなる。
それだけでも、苦しかったのに、知らなかった事とはいえ、
今度は、自分達の罪の隠蔽まで背負わせてしまった。
国王夫婦は気がつくと、最近、過去を悔やんでばかりいる。
特に、王妃は自分の弱さがサークリットを歪めた、と
最近、私室に戻ると泣いてばかりいる。
そんな王妃を見て、国王も自分の不甲斐なさを改めて思い知った。




