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タロ_5

だが、サークリットは冷静に、想定内だ、と言った。

「アレはああ見えて、権力欲の塊のような女だ。


しかも、高位令嬢たちに劣らず、強欲、だ。


子が出来れば、誰の子だろうが、

確実に、それを利用しようとすると初めから思っていた。


むしろ、出来たのがタロの子で良かった」


まだ、その子を愛せそうだ、と微笑みさえ見せるサークリットに

タロはもうなんて言えばいいか分からなくなった。



それから、一度目を閉じ、サークリットはタロに尋ねた。

「もし、タロが望むなら、子は産まれてすぐ死んだとして、

こちらにすぐ連れてくる事も出来るが・・・・・・」


己の御子を立てたいのは、マリアだけでなく、サークリットも同様だろう。


御子が1人生まれるまで、

サークリットは妃でもない女と閨を強いられ続けるのだから・・・・・・


それでも、甥を政治利用する事を躊躇い、他の男の子として

我が子を預けなければならないタロ(父親)の気持ちを慮ってくれる。


そんな優しい男。


それが、タロの大事な弟だ。



ふわりとタロは微笑む。

「出来るなら、なるべく、多くの時間を母親と過ごさせてやってくれ。


あの子が母親と過ごせる時は少ない。


勉強や作法などはこちらに引き取ってから、私がちゃんと教えるから。


だから、母の愛を沢山味わわせてやってほしい」



タロは第一王子だったし、

エリーゼは王兄との恋に夢中でいい母親とは言えなかった。


母の様に、タロを導き、褒め、叱り、支え、育ててくれたのは、王妃だった。


だから、寂しくはなかったものの、少しだけ後悔している。


もし、(エリーゼ)と過ごせる時があれほど短いと知っていたなら、

もっと、2人で過ごす時間を取ったし、大切にしたのに、と・・・・・・


それは思うだけ虚しい後悔。


でも、だからこそ、我が子には同じ後悔を味わって欲しくなかった。



タロの我儘な父としての願いに、分った、とサークリットは快諾してくれた。



サリュは最低限の作法を習うだけで、王族としての教育を全く受けず、

(マリア)の傍でのびのび暮らしていた。


そして、サークリットは折りに触れて、サリュの成長を知らせてくれた。


マリアも一応、我が子は可愛いようで、

それは子を育てると言うより、ペットを愛玩する行為に近いが、

自分が子どもの頃よりはずっと可愛がっては貰えているようで良かった。



そう、我が子に心を傾けるばかりに、結局、

タロはまた、サークリットの犠牲や負担を忘れてしまったのだ。

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