悔恨_3(※タロ視点)
また、苦しみ出したサークリットを抱き締めながらも、
タロの目からも涙が零れる。
神山から戻って以来、紫音の亡骸と共に閉じ籠り、
誰が問いかけても、全く反応を示さない上、紫音の寝床を整えてから、
食事どころか、水さえ取らず、全く動かないサークリットを心配し、
国王はタロを呼び出した。
もちろん、王城に死んだはずの王子を呼び入れるなんて、
それに、応じる方も含め、正気の沙汰ではない。
タロの身を案じ、難色を示した王妃に自ら願い出て、
タロは二度と足を踏み入れるつもりのなかったココへ来た。
サークリットが心の扉を閉ざしてしまったなら、
その扉を開けれる可能性があるのは、今ではもう、タロだけだから。
そうせざる得ない程、サークリットの憔悴は見ていられない程、酷かった。
『すまない・・・・・・、すまん、サーク・・・・・・』
マリアの言う様に、サークリットが産まれてきた事を恨んだ事もある。
サークリットが産まれたせいで、父は狂い、母に捨てられた。
そして、最後には、タロは自分の存在さえ失ったのだ。
サークリットに罪はないと思いつつ、
サークリットの誕生を疎む気持ちが燻るのはどうしようもなかった。
それでも、そうだとしても、タロにとって、
サークリットはアドリアンと同様に、可愛い弟なのだ。
何でもあっという間に、飄々と器用にこなす弟が、実は、
子どもの頃は靴を履く順番さえ変えれない程偏屈で、
夜1人で寝られなくて、枕を持って、
タロのベッドに潜り込んでくる程怖がりだったのは遠い昔だと思っていた。
だけど、今、自分の腕の中で泣くその姿は幼い弟の姿そのままだ。
演じる事に長けた弟が素顔を晒す程、弱っている事に心が痛んだ。
それが己のせいであるなら、なおさら・・・・・・




