暴走_10(※サークリット視点)
「さよなら、ってなんだよ・・・・・・
なんなんだっっ!
君はっ、君はッ、なんで、ありがとう、なんて言えるんだっ!
この世界がどうなろうと、君に関係ないだろっ?!
この世界でどれほどの人間が死のうが、関係ないじゃないかっ!
君はただ、この世界に引き摺り込まれた被害者、そうなんだろっ?!!」
その問いにギュッと目を閉じ、己の妹が犯した罪の大きさを恥じるマグナ。
それでも、腕の中で呼吸する妹を愛おしく、
助かった奇跡に感謝してしまう己の傲慢を自覚する。
だったら、とサークリットは黒猫を揺さぶり、必死に起こそうとする。
「だったら、死ぬことなんてないじゃないかっ!
君が命をかける必要なんてないだろっ?!!
猫だっていいじゃないか、生きていければ、それで、いいじゃないかっ。
生きているだけで儲けモノ、君だってそう言ってただろうっ」
なのに、なのに、なんで、と
黒い仔猫を抱き締め、蹲るサークリットの背に手を置くバジルク。
「彼女は生きる事を諦めたんじゃないんだよ。
この子はね、いつかは消える未来だと聞いても、ありがとう、と笑っていた。
これが、この子にとって、生きた証なんだ。・・・・・・受け止めてやれ」
その時、パチパチと緩慢な動きで目を覚ましたシオン。
だが、誰もが目を引く輝く美貌はもうそこにはなかった。
美しい造作は変わらないが、輝きが失われたその姿に
かつて、視線一つで誰をも魅了した”稀代の美姫”と呼ばれる美しさは無かった。
シオンの魅力はシオンの造作以上に、
魂に内包された竜の力の輝きが影響していたのだ。
まるで、別人のように、凡庸な姫となったシオン。
それでも、そんなシオンをしっかりと抱き締めたマグナ。
「馬鹿者がっ、この、大馬鹿者がっっ・・・・・・」
そう男泣きしながら、シオンを力強く抱き締めるマグナの胸に
しがみ付いて、声を上げて泣くシオン。
その隣でいつも通りの笑みを浮かべながら、
その目から滝の様に涙を流すナールが寄り添うように立っていた。




