暴走_7(※他視点)
「し、お・・・・・・ん、しおんっ、やめろ!
もう、いいから、もう、やめてくれっっっっ。
こんな、こんな風に、逝くなっ、逝くなぁっ!!!」
集まった漆黒の光を離すまいと、サークリットは光を胸に掻き抱く。
でも、光は光でしかなくて、
サークリットの腕の中を通り抜けていくだけ・・・・・・
その時、サークリットは初めて失うという事の本当の恐怖を思い知った。
「紫音っ、しおんっっ、しおんっっっ!!!!」
絶叫し、サークリットが竜の力が吹き荒れる中、崩れ落ちる。
そんな中、
痛みに泣き叫びながらも、恋した人をジッと観察していたシオン。
「なによ・・・・・・、なんで、なんで、紫音だけっっ!」
なんでっ、とシオンが叫ぶと、
シオンの感情に引き摺られ、膨れ上がる竜の力。
それは無防備だったサークリットの身体を拭き飛ばし、
サークリットの背後にいた幾人かの術者の身体も一緒に吹き飛ばす。
辛うじて、その背をダイチ族の戦士たちが支え、結界は保ったが
それも、このままでは持ちそうにない。
やめなさいっ、とマグナが叱るが、逆効果だった。シオンは叫ぶ。
「嫌いッ、嫌い、大っ嫌いッ!みんな、みんな、ウソツキだわっ!!」
私の事、大事にしてくれなかった癖に、とサークリットの身体を更に拭き飛ばす。
私の事、騙したくせに、とマグナの方へ竜の力を投げつける。
私の事、裏切った癖に、と茫然と自分を見つめるナールを睨み付ける。
なのにっ、と叫んだシオンの身体の中から無数の蔦が飛び出てくる。
「なのに、なんで、紫音のことだけは護ろうとするのっ!
そんなの、狡いっ、狡いもんっっ!!」
それは緑竜の攻撃奥義の一つ、樹海。
これ以上、竜の力を乱用すれば、暴走のうちにシオンは死に、
一帯は吹き飛ぶ。そして、緑竜の力が消えた世界は滅ぶ。
奇しくも、それはマリアが予言した乙女ゲームのラストシーン。
やめろっ、と留めるマグナの声は最後までシオンには届かなかった。
「許せない、許さないっ!!
嫌い、嫌い、大っ嫌いッ!!みんな、しんじゃえっ!!!」




