表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
166/202

暴走_5(※他視点)

おかしいな、とぽつりと呟いたバジルクに反応したのは、

バジルクを竜の力から護るために、一緒に結界内に入り、

土色の闘気で壁を立てるムジカ。

「何がだ?」


バジルクは術を唱えながら、器用に答える。

「半端に起動したとはいえ、吸収の術が掛かっているのは間違いない。


だというのに、術が効いているにしては、痛がり方が普通過ぎる」



死に至る程の痛みなのだ。


シオンはイタいと先ほどから叫んでいるが、痛みが過ぎると、

人はこんなにはっきり言葉を発する事は出来ないはずだ。


それに、泣き叫び、家族に助けを求める事が出来ることはもちろん、

バジルクの術に怯え、竜の力を使って、力技で、跳ね退ける余裕まである。



グッと目を凝らし、竜の力である強烈な輝きを放つ碧の光に紛れ、

掻き消えて、見えなくなっている他の光を見て、なっ、とバジルクは絶句した。


どうした、と問うムジカに、バジルクは暫く答える事が出来なかった。


そして、暫くしてから、くしゃりと顔を歪め、

その深緑の瞳から一筋の涙を流しながら、ぼやいた。

「・・・・・・あんた、ほんと・・・・・・、ばか、だな・・・・・・」



暴走し、魂の殻を破って、飛び出る竜の力。


それに引き摺られるように、魂の粒子が外へ飛び出し、

シオンは痛みを感じている。


それは、砂を含んだ水を目一杯溜めた水袋に

穴が無数に空いて、水が噴き出す光景に似ている。


水流となる水が竜の力だとしたら、

それらの水に引き摺られて出て行く砂がシオンたちの魂。


だから、もちろん、激しい痛みを伴うはずなのだが・・・・・・



「彼女の魂が、粒子になっても、シオンの魂を護ってる・・・・・・」



碧の光に掻き消える弱い光を放つ薄い若芽色の光を

漆黒の艶やかな光が包み、碧の光に引き摺られそうになるのを押し留め

堤防のような役目をしていた。


もちろん、その代わり、引き剥がされ、もぎ取られるように

碧の光に漆黒の光が次々、削られていく。


ある光は碧の光に取り込まれ、

ある光は結界まで弾き飛ばされ、ぶつかり、消える。


それでも、漆黒の光はシオンの魂を護るように、

核の回りに漂う若芽色の光を取り囲み、必死でしがみ付いていた。


そんな姿からも、どれほど強い想いで

異界の娘が生前の誓いを魂に刻んでいたかが見て取れて、

バジルクは心が抉られるような思いを味わった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ