広がり_4
一つずつ孤児院を再生させていくうちに、
協力者や賛同者が雪だるま式に増えていった。
文字や簡単な算術を教えてくれるのは、
跡目を後継に譲り、余裕のできた貴族や商家のご隠居たち。
剣術や礼儀作法を教えてくれるのは、元騎士、元警備隊や元侍女の人たち。
なるべく近くに居る人に無理がないように通ってもらいたい。
だが、来る日を決めるのは難しいし、
でも、何時誰が手空きなのか互いに分からないと、予定が組みにくい。
次第に、そういう全てを管理する存在が必要になるほど大きくなった。
私は前世の派遣会社の手法を取り入れ、協力者たちに
どこまでなら通えるのか、何を教えたり、手伝ってくれるのか、
いつ手が空く予定なのかを一括管理する組織を作った。
始めは自分でやろうと思ったけれど、話を耳にした王妃が人手を手配してくれた。
もちろん、暇が出来たら孤児院にフラリと寄ってもらうのは自由。
子ども達は常に遊んでくれる大人に飢えているものだ。
そんな中、思わぬ副効果で驚いたのは、
そんな風に、結果的にいろんな大人が孤児院に関わる事になって
不正が発覚したり、抑制になったりした事。
後、孤児院は各地区の主要神殿内にあるのだが、運営している神官は経営に疎い。
そう言う方面でも、協力者たちが相談にのり、時に手を貸して、
負担が大幅に軽減されたと神官たちに感謝された事。
そんな風に忙しくしていると、嫁いできてから1年半があっという間に過ぎた。
この国にも、というか、シオンとしての生活にも私が大分慣れた頃、
サークリットと寵妃マリアとの御子の1才の生誕祭が行われる事になった。
立場的にはサークリットの正妃ではあるけど、
正直、私なんてお呼びじゃない儀式だし、
いつもの夜会のように体調不良で逃げようと思っていたんだけど・・・・・・
「ドレスや宝飾を新調するので、この週は空けておいてくださいね」
いい笑顔でそう言う義母に言える言葉は一つ。
「分りました・・・・・・」




