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アドリアン_1

『兄上になら、可能なのでしょうね・・・・・・』


知では到底、兄に追いつけないとアドリアンは物心ついてすぐ、悟った。


サークリットは賢いだけでなく、物を見通す目を、そして、

人が一見、無駄と聞き流してしまう事にさえ、ちゃんと耳を傾ける事の出来る

耳を持っていた。


そして、そうした広い視野とそこから得た広い見識は

努力を積み重ねて、得られる類のモノではない。


だから、アドリアンは武を極めようと思った。


特段、身体が強かった訳でも、武に適性があった訳でもない。


加護は直系王族としては極普通と言われていたが、幸い、竜騎士にはなれた。


でも、それだって、サークリットに対しては大したアドバンテージにはならない。

政務に携わるため、騎士団からは離れているが、サークリットも竜騎士の1人だ。



だから、特に、才能があった訳でも、適性があった訳でもないけど、

身体を鍛え続けたのは、一重に、

(サークリット)の治世の何かしらの役に立つ人間になりかったから。


努力の甲斐もあり、学園を出てすぐ、騎士団の隊長に実力で任命されるほど

アドリアンは竜騎士として信頼を得、槍の名手とまで言われるようになった。


皆がアースランドの鬼将軍、ベオウルクの愛弟子と

アドリアンを持ち上げたが、アドリアンには分っていた。


そんな、アドリアン唯一の得手()でさえ、兄には及ばない、と・・・・・・



サークリットは剣でも、槍でも、弓でも、とにかく、どんな武器でも

あっという間に自分のモノにし、完璧に操った。


何より、サークリットの剣はひたすら美しい。


魅入られているうちに、相手は膝をついていると言われるほど・・・・・・



年に一度、アースランド王家主催で行われる武道大会に、

学園を出るまで王家男子の務めとして参加していたサークリット。


そんなサークリットを一目見ようと、国内外から多くの観客が詰めかけたものだ。


普段はアースランドを野蛮と毛嫌いし、

武道大会を見下していたはずのウードランドからも多くの者が

サークリットの剣を見るために、その時ばかりは足を運んだと言われている。

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