悲しき決意_4
話を聞き終えた私はただ悲しくて仕方がなかった。
バジルクはボロボロ泣く私をジッと見つめ、はっきりと告げる。
「この世界のために、そして、アイツの無念を晴らすためにも、
何の関係もないあんたには悪いが、シオン諸共、消えてもらう・・・・・・」
バジルクは私とシオンの状態を教えてくれた。
「あんたの魂はシオンに食われたんだ。
禁術の一つ、呼び寄せの術の結果だ。
魂を隷属させ、眷属にしたり、魂を食い、己の力の糧とする。
あんたに使われたのは後者。
だが、あんたの魂はシオンのそれより強かった。
そのお蔭で完全に取り込まれず、絡み合うようにして癒着している」
それは自分の事なのに、実感がなく、他人事のように感じる。
そんな私にバジルクは容赦なく現実を突きつける。
「竜玉の力はシオンの魂に取り込まれている。
魂は小さな砂粒のような粒子で構成されており、
粒子は感情や行動、記憶でてきている。
もちろん、粒子をある程度失えば、人は生きてはいられない。
人は魂を失うと、カラッポの肉人形になってしまう・・・・・・
訪れるのは、肉体の死ではなく、精神の死。
だけど、竜の力は粒子となってシオンの魂に取り込まれているから。
だから、竜玉に力を戻すには、
シオンの魂を吸い上げ、フィルターを通し、竜の力とそれ以外を選別し、
竜の力を竜玉の中に戻すしかないんだ」
魂は感情を揺さぶる出来事に沢山出会った者程、
自らの意思で行動を起こした者程、強く輝く。
感情や行動を起こした結果、粒子の数が増え、
そして、粒子が増えた結果、魂の煌めきが増すと言う事らしい。
そして、サークリットの事以外に興味を持てず、
サークリットの事も己で何とかしようとする事はなく、
いつも通り、周りの誰かがシオンの望む通りのサークリットにしてくれるのを
ただ待っていたシオンは魂の煌めきが弱い。
竜の力がなければ、霞むほどの煌めきしか持っていないシオンは
前世、1人で難事を切り抜け、今世でも、1人で生き抜いてきた私を
自分の力で抑え込めなかったようだ。
それはシオンの魂の弱さから、竜の力を制御しきれなかった結果であると
バジルクは考えているようだ。
それでも、いつかは私の魂はシオンの魂に飲み込まれる。
ただ、3年もの間、抵抗し続けていると聞いて、バジルクは僅かに首を傾げた。
「あんたの魂が余程強いか、それとも・・・・・・」
そう言ったっきり、バジルクは黙った。
私もそれ以上の説明を聞く必要を感じなかった。




