離された手_6(※他視点)
当初、鷹揚に構えていた国王夫婦も日が落ちても、
シオンが帰らず、見つからない段になると、不安を隠せなくなった。
日が落ちてからは、ウードランドの者に気付かれないように静かに、
だが、総力を挙げて、アースランドの者たちはシオンの捜索に当たった。
それでも、シオンは見つからない。
それどころか目撃証言さえないのだ。
その日、王族は誰一人寝ることなく、朝を迎える。
翌日、王族たちは全ての公務を停止し、王城の一室に集まっていた。
そこには、サークリット達アースランド王家だけでなく、
マグナとナールも居た。
朝になっても、見つからない時点で
王妃がマグナ達の協力を求める事を提案したからだ。
ウードランド王家は竜の秘術と呼ばれる、不思議な術を使う術者を抱えている。
もちろん、彼ら術者は今回の来訪にも同行している。
その力を借りるべきだ、と王妃は進言した。
もう、後の事を心配している場合ではない。
始めはシオンの意思でも、
もしかしたら、誰かの悪意に捕まってしまっているかもしれない。
シオンの身に危険がある以上、使えるモノは使うべきだと王妃は思ったのだ。
暫く、悩んでいた様子の国王だが、それを許可し、
マグナ達にもシオン捜索を頼んだ。
結果的に言えば、術者の力を借りたのは正解だった。
彼らは日常に紛れ、記憶に埋もれる景色をはっきりとさせるという
奇妙な術を使い、その日、その場所に何が起き、どんな人間がいたかを
周囲の民に正確に聞き出した。
その中に、いつも見かけない吟遊詩人がいた事が証言で挙がってきた。
孤児院が立っているその場所は
王都でも賑わいのある場所なので、吟遊詩人が立つ事自体は珍しくない。
そのため、騎士たちが聞き込んだ時は出てこなかった。
でも、その吟遊詩人の歌声は素晴らしく、繁盛していたらしいのだ。
それにも関わらず、
その日限りでその吟遊詩人を誰もその周辺で見ていない、と言うのだ。
それはおかしい。




