離された手_2
でも、”私”が本物に戻れるなら、それこそ、円満に帰る事が出来る。
そもそも、この婚姻はシオンが形だけ嫁ぎ、その名をアースランド王家に刻み、
良い頃合いで国に帰ればいい、それだけの婚姻。
シオンがしがみ付かなければ、
私がシオンの居場所を奪ってなければ、
ウードランドに戻る事で完成する婚姻。
疎まれていると思っていたマグナは、実は
己の進退をかけてまで、妹を取り戻そうとするほど、シオンを愛していた。
騙すようにして手を離してしまった故に、妹を失った事にきっと、
マグナはとても、とても後悔しているのだろう。
マグナの言葉の端々にソレを感じる。
だから、
元の計画に立ち戻り、ウードランドに帰りたいとシオンが願いさえすれば、
マグナは喜んでその願いを叶えるために動いてくれるだろう。
そして、サークリットも
望まぬ正妃が己の意思で円満に去り、その座が空けば、
現在、国母となり得る妃はマリア1人。
例え、マリアが正妃になれなくとも、
マリアをサークリットが優先する事を咎めれる者はいない。
そして、きっと、サークリットなら、そのよく回る頭と弁舌で
私の正妃はただ1人、とでも言って、正妃を空位のまま、上手く事を運ぶだろう。
そうすれば、サークリットは最愛との生涯を何の憂いもなく全うする事が出来る。
そして、もちろん、
王太子2人で強引に推し進めている和平協定も必要なくなる。
彼らは当初の予定通り、非公式に手を結び、緩やかに、
全ては難しくとも、多くの国民がゆっくり受け入れられる形で
両国の絆を少しずつ育んでいく。
それが実るのは百年、いや、数百年後だろう。
それでも、時間と己の意思を費やし、続く者を信じて、未来を託す。
それこそ、王たる者の役目だ。
そう、イイコト尽くめなのだ。
・・・・・・私が消えさえすれば・・・・・・




