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広がり_2

孤児院では前世で愛用していたそれよりかなりごつい洗濯板で

一枚一枚洗濯するのだが、子どもは何かと汚す生き物。

洗濯機もないのに、日々、尋常ではない洗濯物が出る。


女性神官たちは数人掛りで半日かけて子ども達の洗濯をこなしているらしい。


私は手始めに洗濯のやり方を変えた。

大きな桶を用意してもらって、そこに洗濯物と洗剤を入れ、足踏み洗い。


私の姿を見た子ども達が遊びと勘違いして乱入し、一緒に泡だらけになる。


その後、洗濯は子ども達の遊びの一つになって、

子ども達が当番制でお手伝いするようになった。


後は日のあたりのいい場所に小さな畑があったのだが、

手間がかかる割りに収穫が今一らしかった。


野菜は地植えがこの国では基本だが、

虫にやられやすい作物や寒暖に弱い作物はコンテナ栽培がおすすめだ。


かといって、この世界では、鉢植えは観賞用に使われるのが一般的で高い。


だから、前世の紙パックを使ったなんちゃって鉢植えを思い出し、

麻袋を鉢植え替わりにして、日当たりのいい室内で育てる事を勧めてみた。



始めから私のやる事に興味を示し、楽しむ子ども達とは対照的に、

始めは慌てふためいていた大人達。


でも、子ども達が私を真似て、遊戯の一つとしてお手伝いをするようになると、

大人たちも次第に順応していった。


そして、いつしか騎士たちも私の護衛をしながら、

男の子たちに剣術や体術を教え始めた。

私も希望者を募って、文字や簡単な算術を教えるまで彼らと馴染んだ。



やんちゃな子ども達に手を焼いていたのだと腰の曲がった医院長や女性神官たちは

子ども達の変わりように驚いていたが、大人達が考えるよりずっと

子どもは自分の立ち位置を、そして、周りの事をよく見ているものだ。


良い子にしたって、13になれば追い出される。

手伝いをしたって、御飯が増えるわけじゃない。


だから、言う事は聞かないし、手伝いもなるべくしたくない。


でも。


明日を生きるために、文字や簡単な算術が、戦い方が、

日々生活していく上での知恵が拠り所のない彼らにとって、

生き抜く術となることを彼らは既に知っている。


それを教えてくれる私という存在がどれほど貴重かを誰に教わるわけでなく、

嗅ぎ分けている。


そういう人に孤児(私たち)は惹かれ、従う。


私はただ、前世の私が欲しかった存在を演じただけ・・・・・・


そうして一つの孤児院を数か月掛けて立ち直らせた後、

私の活動に興味を持ってくれた有志の人々に後を任せて、次の孤児院へ赴いた。


最後の日、子ども達に何度も何度も、また来ることを約束させられた。


その事が一番のご褒美だったと思う。


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