マリア_15
だが、それでも、そんな複雑で深い因縁を抱えた相手だと知りながら、
祖父と祖母は互いに恋に落ちた。
そして、過去からの因縁からは逃れられないと、
先のない関係と互いに知りながらも、時を、身を、心を重ね、秘かに愛を育んだ。
それでも、別れの時は来る。
祖父は娘を宿した祖母を置いて、一族の宿願のために
大規模クーデターの中に身を投じた。
別れ際、2人は来世の誓いを立て、今生の無情を飲み込んだ。
それから、父なし子を宿したアバズレと貶められながらも
祖母は1人で娘を育て、旅の商人で気のいい男に娘を託すと、
待ちかねたと言う様子であっという間に愛する男の元へ旅立った。
その娘と商人がヒロインの両親。
両親はずっと前に亡くなった祖父の事を知らなかった。
だから、産まれてきた娘の瞳が深緑だった時、慌ててウードランドから逃げた。
ウードランドでは深緑の瞳は蛮族の象徴。
もう、人はそれが自分達が敬うべき伍竜家の一つ、リョク一族の象徴である事を
長い時と諍いの果てに忘れてしまったのだ。
だから、もし、その瞳の色が村人に見つかれば、
弁明の余地さえなく、その場で親子共々嬲り殺される。
両親は外の情報に乏しいアースランドの辺境に逃げ延び、娘を大事に育てた。
ヒロインの力は祖父譲りで強力だった。
ヒロインの力は回りの人を自分の望む通りに動かし、望む結果を生み出す力。
ヒロインはそれを無意識に発動させるのだ。
マリア自身、その力を何度も実感している。
ただの行商だった父が店を持ち、繁盛させ、
下位だろうが貴族にまで成り上がったのもマリアの力のお蔭だろう。
その力は魅了とも幻術とも違うのだが、言うなれば、
恣意的に望んだものや幸運を引き寄せる力と言える。
だからこそ、マリアが望んだ未来が手に入らない事なんてないはずなのだ。
でも、仕方ない。大変、大変遺憾だが、もう認めるしかない。
サークリットルートはこのままでは攻略不可能だと・・・・・・
「だからといって、諦められないのよっっ・・・・・・」
大好きだった。
前世でただの女子高生だった頃から・・・・・・
友達に馬鹿にされたり、気味悪がられたりしても
そんな事どうでもいいくらい、生身の人間じゃなくても構わないと思うくらい
サークリットに夢中だった。
実在しない相手と承知で恋していた。愛していた。
だから、この世界に転生したと気付いた時、歓喜した。
直接、サークリットに会える奇跡を与えてくれた神に感謝した。
『絶対に、絶対にっ、諦めるものですかっ』
いいわ、とマリアは暗い笑みを浮かべる。
「・・・・悪役令嬢はヒロインが打ち果たすものよね・・・・・・」
悪役令嬢がどうしても思う様に動かないならば、
状況を動かすまで。
ルート分岐やイベントが役に立たなくても、
ゲームの知識が役に立たないと言う事じゃない。
トゥルーエンドに無理やり持ち込めば、マリアの勝ちなのだから。




