広がり_1
スパルタの妃教育が一段落して、王妃に初めて茶会に呼ばれた。
この人は中立な人。
誰かの肩を持つことはないが、私の敵にもならない。
「そろそろ、公務を任せたいと思うのですが、興味のある事はありますか?」
妃教育を受けていく中で、公務についても学んだ。私は頷く。
「できれば、孤児院の管理に携わりたいと存じます」
ジッと一度間を置いてから、イイでしょう、と王妃は頷いた。
私は手始めに王都で王城に一番近い孤児院の視察に出向いた。
だが、それは視察と言うより大名行列のような状態で・・・・・・
その光景に、私は前世で選挙前に
票集めのパフォーマンスに来る議員たちを思い出し、嫌な気分になった。
私は王宮の外へ出る事さえ渋る私の担当護衛騎士に
お忍びで孤児院に訪問したいと何度も丁寧に、そして、辛抱強く主張した。
だが、夫に蔑ろにされている弊害がこんなとこに現れる。
それは無理だとか、前例がないだとかとのらりくらりと私の意見を躱し、
まともに取り合おうとしない彼ら。
私は我慢に我慢を重ねた結果、結局、ぶちキレた。
「あんな風にゾロゾロ皆で行って、何が分かるっていうの?!
日々の仕事の邪魔になるだけで、こっちにもあっちにも益がない。
それくらい分からない?!
いいわっ!
ここに万が一、私が死んでも貴方方に責任はないと書いてあげる。
それならいいでしょ?
というか、この国に
私にどうしても生きていてほしい人なんていないんだからいいじゃないっ!」
担当護衛騎士たちはポカンッとした後、そんな事はないと必死に否定したが、
私は私の意思を曲げなかった。
ここで家族を作る事は諦めた。
ならば、せめて前世の私のように、
いや、私以上の苦境の中で生きる子どもたちの手助けがしたい。
生きていく手段を学ぶ機会と、最低限、健やかに育つための糧と居場所を
彼らが享受できるようにしてやりたい。
私がキレた後、お飾りっぽかった美形の騎士に代わって、
厳つい、戦士といった見た目の騎士が私の担当護衛として訪れた。
彼らも初めは私の案に否定的だったが、ちゃんと私の言葉に耳を傾けてくれた。
そして、何度も何度も話し合って、彼らは大幅に私に譲歩してくれた。
顔をあまり知られてない私はかつらと偽名を使って
貴族令嬢として孤児院を訪問することを許されたのだ。
貴族令嬢の護衛は2~5人程。
最低でも5人は付けると言われたが、
張り付いているのは3人で残りは隠れておいてほしいと頼んだ。
あまり高位の令嬢だと思われると、結局、実情を把握できないからだ。
そうして、妃教育の合間を縫って通った孤児院はとてもとても楽しかった。




