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お姫様の病状

 さて……、いざとなるとなかなか入りにくい物があるが……。

 俺は今女湯ののれんの前に、水着のパンツ一枚姿で立っている。

 準備が出来たらクスハが合図を出すと言っていたが……。


「山城さんこちらは準備出来ました。お願いします」

「分かった。入るからなー!」


 一度大きく息を吸い込んで大股で女湯の脱衣所へ足を踏み入れた。

 中の作りは同じなんだな。


 さて、いざ混浴へ!


 扉を開けて浴室へ踏み込むと、水着を着たミリア姫と三姉妹が待っていた。


「あ、あの山城さん……あまり見ないで下さいね? 恥ずかしいので」

「見るがいいさーこのあたいの健康的な肉体をっ! 惑わしちゃうぞー、誘惑しちゃうぞー、ドキドキさせちゃうぞー」

「ユイうるさい。早く始める」


 クスハ、ユイ、ヒビキ三者三様の反応と可愛らしい水着姿を見て、遊びたくなるが今は大事なお姫様の治療がある。


 さっきからずっと咳き込んでいるし、顔色も身体の血色も悪くて辛そうだ。

 ヒビキの指示でクスハとユイがお姫様を支えながら湯船へと入れた。


「お兄さん、お願いします」

「分かった。お邪魔します」


 俺も湯船に浸かって足を伸ばす。

 やべぇ。この三人と一緒にお風呂に入っていると思うと、なんかムダにドキドキしてくる。って、そんなことより身体の治療だな。


 温泉の魔力でぼんやりと湯船が輝く。身体を芯から温める感じで、ゆっくり落ち着いて眠れるように。


「さすがお兄さん。良い魔法が出てる」

「良いダシ出てるみたいな言い方だな……」


「お兄さん一番搾り」

「ヒビキちゃんノリノリだね!?」


 酔っ払ってるのかとも思ったがヒビキの尻尾がお姫様を向いてユラユラとしていた。


 恐らく、この会話でお姫様の気を紛らわせようとしているのだろう。


「ヤマヤマ……私、味見していいかな!?」

「やめてっ!?」


「冗談だよ。あー……でも、このお湯いつもより気持ちいいかもー……とろけそう」


 仕事を忘れて寝かけているユイを、クスハが必死に揺らして起こしている。

 で、肝心のお姫様はというと……。


「けほっ……けほっ」


 お姫様の咳が治らない。おかしいな。魔法が効かない? それとも魔法が発動していない?


「ヒビキちゃん魔法はちゃんと発動してるよな?」

「発動してる。でも、おかしい。全く効いてない」


 傷や火傷はすぐ治るのに病気は治らない。ということは、違う魔法を試さないといけないのか?


「けほっ……妾はやはりここまでなのか……医師が言うには一ヶ月保てば……と」


 残り寿命が一ヶ月って聞いてないぞ!?

 ん? そういえば、療養するって言っていた期間も一ヶ月だったか。

 いや、今はそんなことよりも。


「魔法の種類を変える必要があるか?」

「ううん、体力の回復が病気を治すのに一番大事。でも、体力の上限が削られているような……」


「へぇー、何か呪いみたいだな」

「呪い……? 呪い。そっか。呪い。お兄さん、ちょっとお風呂で待ってて」


「何か分かったのか?」

「うん。脱衣場で呪いがかかってないか調べる。クスハお姉ちゃん、ユイ、脱衣場に連れてって貰って良い?」


 三人娘がお姫様を連れ出して、俺は一人風呂の中に待たされた。

 病気では無く呪い、寿命が一ヶ月、死んで喜ぶ親族も多い。


 なんだかきな臭くなってきたなぁ。


 華狼館を襲うやつは大臣が睨みを利かせて押さえてくれるんだろうけど、後悔するっていうのはある意味間違い無かったかも。


 思った以上に厄介なVIPを預かることになったもんだ。


「さすがお兄さん。予想通り呪いがかかってた」

「となると、その呪いを解除する魔法を使えば良いのか?」


 俺の問いにヒビキは首を縦にも横にも振らなかった。

 尻尾が丸になったり、はてなになったりして、定まらないあたり酷く悩んでいるようだ。


「ヒビキちゃん、何に悩んでいるの?」

「呪いを解除する魔法を使えば良い。それは間違い無い。でも、呪いは肺にかけられて、心臓にまで達してる。多分、後少しで心臓まで呪いに犯されて死ぬ」


「あぁ、そういうことか」


 確かに温泉に入るだけでは難しい。それに直接手を肺に突っ込める訳でもない。

 原因が特定出来ても対処のしようが無いということか。

 ヒビキちゃんが悩む訳だ。


「傷とか火傷は身体の表面だからすぐ治るけど、身体の中にまでは魔法が届かないんだな?」

「うん。肺にお湯を入れる訳にいかないし」


「この温泉の湯気じゃダメなのか?」

「地殻結晶が溶け込んでいるのはお湯だから、湯気だけだと効果薄いかも。地殻結晶が直接湯気でも出せば良いんだろうけど」


 その岩から直接発した湯気なら良い。もしくは空気となると、アレが効くか?


「地殻結晶そのものはあるのか?」

「うん。ちょっと高いけど売ってる。いざとなればヒビキが掘りに行ける」


「それなら出来るぞ。肺に温泉の魔法かけるの」

「え?」


「着替えたら俺の部屋に来てくれ。それとヒビキちゃんの力を借りるよ?」

「ん、分かった」


 さて、新しい施設を追加だ。

 不謹慎だけどちょっとワクワクしてきたぞ。

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