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笑う神
ある廃墟に 老婆と子供がいた
さまよえるユダヤ人アハスヴェルスがそこを通りかかったとき
山脈は雪に 空は雲におおわれていた
生きることに倦んでいたユダヤ人は 老婆に話しかけた
なぜこのようなところにお住まいなのですか
老婆は答えた 神の子守りを
どこにいらっしゃるのですか
ここに 老婆は子を指差した 暗愚の子であった
神には知恵があります
だれがそう言ったのじゃ
このような場所は神にふさわしくありません
もし神が暗愚であり 廃墟に住みたまうものであれば
それだけ非凡な それだけ愛するに値することになりはしまいか
男は黙って 小屋を出た
どこかで神の笑い声を聞いたような そんな気がした
ラーゲルクヴィスト『巫女』より