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hommage  作者: 稲葉孝太郎
ラーゲルクヴィスト『巫女』
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笑う神

ある廃墟に 老婆と子供がいた


さまよえるユダヤ人アハスヴェルスがそこを通りかかったとき


山脈は雪に 空は雲におおわれていた


生きることに倦んでいたユダヤ人は 老婆に話しかけた


なぜこのようなところにお住まいなのですか


老婆は答えた 神の子守りを


どこにいらっしゃるのですか


ここに 老婆は子を指差した 暗愚の子であった


神には知恵があります


だれがそう言ったのじゃ


このような場所は神にふさわしくありません


もし神が暗愚であり 廃墟に住みたまうものであれば


それだけ非凡な それだけ愛するに値することになりはしまいか


男は黙って 小屋を出た


どこかで神の笑い声を聞いたような そんな気がした

ラーゲルクヴィスト『巫女』より

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