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左手の欠けた男
ながい旅のあとで ブリムンダは広場に腰をおろし 施しを乞うていた
すると ひとりのおとこが彼女に近づき 鉄の留め金を差し出した
お金でもパンでもなく 彼女のさまよい求めてきたものであった
なぜなら 神の左手は欠けており この男の左手もまた 欠けていたからだ
バルタザルなのね 女は言った
ブリムンダだね 男は言った
さあ 話しておくれ きみが消え失せたあいだのできごとを
消え失せたのは私じゃないわ だから あなたが話して
ああ 話してやろう
ふたりは 時の果てるまで 話し続けることだろう
ジョゼー・サラマーゴ『修道院回想録』より