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「お兄さんは旅の方かしら?」
トロティアーナという街の中心部にある、とある酒場。
世界中を旅する青年、クライドは店の店員である女性と話していた。女性は彼よりも年上に見えるが、店員の中では若い方に入るくらいで、茶色の髪を頭の上の方で縛っている。おとなしい女性というよりも活発な印象を受ける。若いながらも慕われていそうな女性である。
「はい。出身は□□□です」
クライドは自分の出身国をあげる。2年前に出てきた国だ。一度も帰っていない。
「へぇ、若いのに結構遠くまで来てるのね。で、注文は?」
「ぶどう酒」
「……年齢…聞いてもいいかしら…」
女性は訝しげに聞く。それを気にせずクライドは当たり前のように答える。
「17です」
「やっぱり。あなたの国じゃどうだったかはわかんないけど、この国じゃ飲酒は20歳からよ。酒は出せないわ」