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しゅごれい  作者: 千世
第二章 朝野いのりサイド
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(3) 【死ゅ語霊】と再会




 気まずいかもと考えていても、昔の事を考えていても、どうにもならないので、意を決して夜宵の家の前まで移動する。

 緊張する……。

 しかし、右側にある小さなインターホンを鳴らさなければ、夜宵は出てこない。

 いっそ、夜宵が一人暮らしじゃなければ良かったのに。一人暮らしじゃなければ、夜宵が出る確率も低かったのに……。

 インターホンを押せば、百パーセント、夜宵が出て来てしまう。

 ううっ。

 会いたいのか、会いたくないのか……自分でもわからなくなって来た……。

「悩んでいてもしょうがない!」

 恐る恐る、インターホンを一度鳴らす。

 待っている時間が恐ろしいくらい長く感じる。多分、数秒の事なんだろうけど……。

 ドキ、ドキ。

 心臓の音が煩い。

 早く、早く出て……!



『は、はい? ど、どちら様、ですか……?』



 久し振りに聞く、夜宵の声だった。少し声が低かったので、別人かと一瞬思ったぐらいだ。

 何か焦っているような雰囲気だったけど、今の時間を考えれば、寝坊して慌てて準備をしているだろうと推測する。

「あ、あの、朝野ですけど……! 母に、お土産を渡すように頼まれて……!」

 自分でも、声が震えているのがわかった。

 早口だったし、聞き取れたかな……。もう少し、普通に話せば良かったと今更後悔しても仕方がないけど……。

『え、いのり……さん……。……ちょ、ちょっと、待って……。え……ちょ、おい、カイ……!』







 え?







「カイ……?」

 何で、夜宵が……。

『え? あ、猫、拾って……! ちょっと待ってて。すぐ片付けて出るから』

 ガチャ。

 インターホンの受話器を置く音が聞こえ、静寂が漂う。

 私は、さっきとは違う意味でドキドキしていた。ふわふわした気持ちではなく、嫌な予感がぐるぐると渦巻いていく。

 …………。

 偶然だ。

 カイなんて名前、珍しい名前でも何でもないし……。

 夜宵は猫だと言っていたし。

 私の親友とは、全然関係なんて――。



「いのりんじゃん。久し振り~」



 声が聞こえて後ろを振り返ると、長い黒髪を三つ編みにしている少女が立っていた。

 私が知っている少女よりも、成長した姿をしていて……とても大人っぽく見えた。

 死んでしまった私の親友にあまりにも似ていて……驚いてしまい、声も出ない。

「おお、いのりんも大人っぽくなってるな~。まあ、オレもそこそこ成長したと思わね?」

 本当に、カイ……?

 で、でも、カイは死んでしまったはず……。

 目の前に居る、なんて……あり得ない。あってはいけない事だ。

「オレさ、【死ゅ語霊】になって戻って来ちゃったんだよね」

 嘘だ。

 何の冗談なんだろう……。

「でさ」

「…………」



「夜宵、死ぬ運命なんだよね。まあ、オレが夜宵の魂を持っていくようなもんなんだけどさ」


 カイと名乗る少女は、もっとあり得ない事を言った。

 夜宵が死ぬ運命?

 何を言っているの……?



「んで、ただやるだけじゃ面白くないし。いのりん、夜宵を助ける為にオレとゲームやらね?」



 私はカイの言っている事が一つも理解出来ず、ただ立ち尽くすしかなかった……。









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