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しゅごれい  作者: 千世
第二章 朝野いのりサイド
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(1) 【死ゅ語霊】と私




 三年前の春の事。

 やっと寒さから解放され、桜の花も満開に咲き乱れている頃。



『朝野いのり、さん?』



 中学の入学式が終わり、クラスで席に一人座っていた私。

 他の人たちは隣の人とすぐ喋る様になって、たわいもない会話を繰り広げていたのに、引っ込み思案な私は誰とも話せずにいた。

 話したくない訳ではなかったけど、何を話せば良いのかわからなかった。

 挨拶はするとしよう。

 なら、その後は? 今まで接点がなかった人たちに、何の話をすれば盛り上がるんだろう。黙る事になるくらいなら……。

 そんな理由から、誰とも話してなかった。

 その私に声をかけて来たのが、カイだった。

『え……あ、はい。そう、です、けど……』

 話しかけられるなんて思ってもみなかったので、かなり動揺し困惑していたと思う。声も、詰まってばかりだった。

 しかし、カイはそんな事は気付いてないとでも言うかのように、普通に話を続ける。

『ふーん。珍しくね? いのり、なんてオレ初めて聞いたぜ』

 喋り方があまりにも男っぽかったので、私はカイを上から下までマジマジと見詰めた。

 サラリと整えられたセミロングの黒髪。トレードマークにも見てとれる、雪の結晶のヘアピン。スラッとした手足と、中学生には少し大き過ぎる胸。

 そして、中学指定の紺セーラー服をスカートの丈を短くして着用している。

 ……女装、とかじゃないよね?

『疑ってる?』

『え! あ、いえ、あの……!』

 私、何て失礼な事を考えたんだろう……!

 もう一回、さっきの時間をやり直す事が出来たら。欲を言えば、小学生より前に戻れたら、どんなに幸せか。

 私の性格も違うものになっていたかもしれないのに。

『オレ、って言うからさ、変に見られがちなんだ。でも、オレはずっとこの話し方で通して来たし、ポリシーみたいなのもあるから変えるつもりもねーもんね』

 ちょっと格好良かったと思わね?

 そう言うカイの表情は、とても堂々としていて、笑顔が私にとっては眩しいくらい綺麗なものだった。




    ※※※




「眠い……」

 午前七時二十分。

 学生の私は、そろそろ起きて準備を始めないと遅刻してしまう。高校まで電車通学をしているので、どうやっても一時間はかかる。

 でも、朝が弱い私は未だにベッドから抜け出せないでいた。







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