(29) 【死ゅ語霊】と笑顔
本当に久し振り! というくらい早めの更新が出来ました。
凄いキセキ……!(大袈裟ですね)
『いのりん。夜宵のこと、好きだろ~。本当わかりやすいな~』
夜宵のことを好きだと自覚したのは私自身ではなく、カイに言われてからだった。
あの頃の私は、馬鹿じゃないの。そんな訳ないじゃない。カイも適当なこと言わないでよ。って、真っ赤な顔をして否定していたような気がする。思えば、バレバレだったのに。
今も変わらないような気もするけど、少なくとも真っ赤になることはないと思う。
『良いじゃん、良いじゃん。オレら、学生だぜ? 青春真っ只中だぜ? 恋くらいしねーと! 恋。良い響きだね~』
『……そういうカイは、どうなのよ』
『オレ?』
きょとんとした表情を浮かべたカイだったけど、今思えばあれは演技だったんだなって思う。
ただ、あの頃の私にはわからなかったけど。
『オレは、遊びに生きてるから良いんだよ』
『遊び?』
『そっ。いのりんと夜宵と遊ぶの、すげー楽しいもん。これからも、ずっとずっーと、一緒に遊ぼうな。な? いのりん』
ニシシシ……と言いながら笑うカイの笑顔は、とても眩しく見えたことはよく覚えている。
今は、意地悪い笑顔しか見たことないけど。
カイは覚えてる?
ねえ、もしかして夜宵も……。
「……カ……イ……」
そう呟いたものの、それだけでは思い出してくれたのか判断が付かない。
どうなってるの?
私はカイのことは喋ってないわよ?
それとも、昔のことを話すと思い出すとか……そういうルールでもあったの?
「夜宵……」
私は、取り敢えず夜宵に触れようと手を伸ばす。
しかし……。
「いのりん、ストップ」
夜宵の肩を掴もうとした瞬間、突然目の前にカイが現れ、腕を掴まれた。
「え?」
それと同時に夜宵は、その場に倒れ込んでしまう。急に意識が飛んでしまったかのように、唐突に。
「大丈夫。夜宵は何ともねーから」
「で、でも、倒れ……」
「オレがやったことだから、心配しなくても良いって」
「カイが……?」
「強制的に思い出させよーとしてたみたいだからな」
そう告げるカイの声と表情は、今まで見たことがないくらい真剣そのもので、とても……怖かった。
睨んでいる訳じゃないんだけど、こう……目が笑っていないと言うか……。
「……誰が……?」
「……オレの身内、みたいな?」
「?」
身内? どういうこと??