(25) 心配
今回は続けて更新が出来ました。
長く更新してなかったので、人物の口調が若干変わっているかもしれませんが、そこは……あまり気にしない方向でお願いします。
「『ねえ、知ってるなら教えてよ。勿体ぶるところでもないでしょ』」
「『そんなことより、前見とかねーと、また注意されるぞ。ほら』」
「『え?』」
ふと前を見ると、教卓の上に座っていたはずの彩音の姿がなかった。
あれ? 彩音は?
「お兄ちゃん!」
「ヘッ?」
声のした方へ……右横へ少しずつ視線を合わせていくと、そこにはさっきまでいなかった彩音が居た。
しかも、机の上に座っている為、僕のとても身近に……。
「って、ええええ! いつの間に!」
最初に声をかけられた時は気にしていなかったけど、いきなり目の前に現れたので驚きも倍増し、思わず椅子ごとひっくり返ってしまう。
「痛っ……」
家と違い、絨毯も何もない板の上は痛かった。
「お、お兄ちゃん、大丈夫……?」
さすがの彩音もこけるとは思っていなかったのか、心配そうに僕の顔を覗き込む。
「だ、大丈夫、大丈夫」
別に怪我をしている訳でもなかったので、床に手を付いて起き上がろうとした時――。
――そんなに驚かなくても良いんじゃね?
頭の中に映像が流れ込んで来た……ような気がした。
いや、気のせいじゃない。でも、僕の知らない光景のような……。違う。僕は知っている。知っているけど、知らない。
自分で思っていて矛盾しているなと思うけど、そうとしか言いようがない。
何だ、何なんだ。
もしかして、僕が忘れているかもしれないことって……。
「何してんの?」
顔を上げると、カイが不審そうに僕を見ていた。いつまでも起き上がらない僕にうんざりしているのか、それとも……。
「気分でも悪いなら、そう言えっての。皆超どん引きするんですケド」
そう言いながら、僕の腕を持ち上げて無理矢理立たせる。
少女、なのにそんなことで力を発揮していいものなのかと思っていた思考は、彩音を含め心配そうに見ている皆の顔を見て一端停止する。
自分のことばっかりで、周りのことを考えていなかったことに今頃気が付く。
「ご、ごめん。本当に、大丈夫だから」
「…………」
その一言で皆はホッとした顔をしたけど、カイだけはずっと僕を――睨んでいた。