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しゅごれい  作者: 千世
第一章 涼風夜宵サイド
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(3) 運命



 って! 普通に会話してどうするんだよ!

 突きつけられたメモ帳を、僕はカイに突き返す。

「そういう冗談は良いから! 早く出て行けよ! って言うか、誰!」

「まあまあ。そんな事、気にする仲じゃないじゃん」

「はあ?」

「名前? さっき、カイって名乗ったけど」

「名前を聞いてる訳じゃないんですけど」

「そうなのか?」

 楽しくて楽しくて堪らないという笑みを浮かべるカイ。

 遊んでいるのか。からかわれているのか。

 これは、何かの罰ゲームなのだろうか。そんな事をする友人は思い当たらないけど、遊んでいるとしか思えない。

 何が何だかわからないけど……。

 あまり歓迎すべき相手じゃない事は、確かみたいだ。

 どうにか、納得して貰って(何を納得してないのかわからないし、ここに居る理由もわかんないけど)、帰って貰う方向に持っていくしかない。

「……【死ゅ語霊】とか、そんな単語、初めて見たけど」

「そりゃそーだろ。勝手に作っただけだし。それに……」

 笑みを浮かべていたカイは急に黙り込み、そして僕の顔をじっと見つめる。僕が見られている事に気付いた時にはもう笑っておらず、無表情だった。

 何の感情も読み取れない、恐怖感さえ湧き上がってきそうな……そんな表情。

 そして、カイはこう告げた。



「――人殺すのに、名なんてどーでも良いし」



「何、それ……。あ、遊びなら、他でやりなよ……」

 カイの表情にすっかり呑み込まれてしまったのか、僕の口から出た言葉は少し震えていた。

 今頃になって不審者であるカイに恐怖を感じた。

 ……という事にしておいて欲しい。

「遊び? それ、本気で言ってんの? こんな事、遊びで言うか? 普通」

 言わないと、思う。思いたい。

 でも、だからって霊を信じろって言われても、答えはノー。

 霊なんて、居る訳がないんだ。居るのは空想の世界だけ。ゲームや漫画、小説の世界だけ。

「……君にとっては今更な質問かもしれないけど、殺されるのって、僕……?」

「ここには、オレとお前しかいないんだぜ? それだけで悟れよ」

「それって、単純に言うと、死ぬ運命……ってやつ……?」

「さっきからそう言ってるだろ~。鈍い~」

 また、急に表情も言葉のトーンも変わる。

 さっきまで、いかにも暗い真面目な話をしてます的な雰囲気だったのに、駄々をこねている子どものような口調で、和やかな雰囲気になっている。

 何なんだよ……。

 コイツ、普通の女の子に見えるのに、気味が悪い。

 はっきり言って、不気味過ぎる。

「二重人格……?」

 とっさに思った事が口から出てしまった。

 反射的に口を押さえるけど、今更やっても遅いだろう事に、口を押さえてから気付いた。

「まっさか! あれは営業用! こっちが本当のオレ!」

 しかし、カイは気にした様子もなかった。

 敢えてなのか、気付いていないのかはわからないけど、僕の行動を責める事もしないし……何も言ってこない。

 頭が混乱して来て、何が何だかわからなくなってきた……。

「営業……。ビジネスマンみたいだね……」

 こっちの流れに持って来て、早々に帰って貰おうと思っていたのに、何だかカイのペースに巻き込まれている気がする。

「だって、人を殺すビジネスをしてますカラ!」

 嬉しそうに告げるカイに、思わず可愛いな……なんて思ってしまった僕。

 ああ、もう駄目かも。色々と。

 もう……人間でも、霊でも、どっちでも良いかな……。

 そう頭の中で完結させた僕は、台所に入って冷蔵庫を開け、紙パックの牛乳を出す。

 そして扉を閉めてからカゴに積んであるミルクパンを一つ取り、リビングに戻って、ソファーに座った。

「運命……か。仕方ないか、運命じゃ……」

 ミルクパンを一口齧り、牛乳を飲む。

 立って僕を見ていたカイも、僕の向かい側のソファーに座り、いつの間にか持っていた缶コーヒーの蓋を開けて飲んでいた。

「うん、仕方ない。だから、死んで☆」

「それも、嫌だ。僕だって、まだ生きていたいよ。人間だからね」

 諦める、という手もあるけど。

 そんな簡単に諦めてたまるか。

 いくら見た目がどんなに可愛い女の子でも、死んで欲しいなんて言われて死ぬなんて……あり得ないし。

 まだ状況が読み込めてなくてわからない事だらけだけど、逃げてたまるものか。

 僕は死なない。

 そして、コイツを追い出す方法を何とか考えなくちゃ。








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