(17) 【死ゅ語霊】と仮面
「昔の事……」
それは、カイが生きていた時の頃の事。
何でも出来て、皆を引っ張っていけるリーダー的存在で、ムードメーカーだったカイ。私が尊敬していた人。
なのに、私はカイを助けてあげる事が出来なかった。
死ぬ間際に、私はカイの傍に居たのに……足が竦んで、何にも出来なかった。
「ねえ、カイ。これは、罰なの……?」
何も出来なかった、私への復讐。
昔のカイなら、そんな事はやらない……と思う。
でも、死んでから現れた今のカイを見て、ふともしかして可能性もあるかも……と思ってしまったのも、事実。
「それが、いのりんの答えなのか?」
「答えって……」
「オレが現れた理由は、お前への復讐……つまり罰を与える為に来た、っていう答えかって訊いてんの」
「そ、それは……」
可能性として思い付いただけで、答えとしてかどうかなんて……わかる訳ない。
そもそも、もし答えを出したからと言って、どうなるって言うの?
「はあー」
カイは大きくため息を付いた。
へ?
真面目な話をしていて、私も真面目に考えていて心が張り詰めていたところに、急に空気が抜けるようなため息を聞いたので、私も気が抜けてしまった。
「やっぱ、真面目な話は疲れるよなー」
「はい?」
「冗談だよ。今までの話は、全部冗談」
「じょ……冗談……?」
「そっ。いのりんを混乱させたかっただけ。さすがに、そんなに真面目に考えるとは思ってなかったんで、悪い事したなとは思ってるんだぜ。だから、謝る。ごめん」
な、何?
一体、何なの……?
ころころと変わる展開に、そしてころころと表情を変えていくカイに付いていけなくて、私の頭はまさにパンクしかけだった。
今までのが冗談?
あんなに……と言うか、結構話したのに?
じゃあ、今までのは何だったの? 混乱させる為だけに、あんな真剣な表情をして、悲しそうな顔をしたって言うの……?
「よく考えてみろよ、いのりん」
「は?」
「オレが、本当はいのりんをイジメたくない、なんて言うはずないだろ~。面白い為だったら、オレ、平気でいのりんの事、イジメるぜ」
た、確かに……そう、かも。
いやいやいや……カイの演技だって、可能性もある。カイはいつも仮面を……と言うか、大きな猫を被るのは得意だったもの。