(16) 臆病
久し振りのいのり編、更新。
二つ同時に書くのは面白いけど、内容を忘れたりするので大変です……自分でやっといて何なのですが……。
カイといのりの会話シーンの続きになってます。
さて、三上さんは何時出て来れるのか……。
「オレ、何で【死ゅ語霊】になったと思う? どうして、【死ゅ語霊】になってまで、ここに居ると思う?」
「え……」
最初に思った事は、こうだった。
どうして今、そんな事を……私に訊くの……?
しかも、寂しそうにしているのに……笑っているし。何かを伝えたいって顔をしているのに、言葉にはしない……。
言ってしまえば楽なのに、どうして言おうとしないの?
どうして、私に質問ばかりするの?
心の中では次々と言ってやりたい事、質問したい事は浮かんで来るのに、一つも言葉にする事は出来ない。
臆病者だ……。
知るのが怖い。本当の事を知ってしまうのが、怖いんだ……。
「……わかんねーよな」
暫く黙っていても何も言わない私に愛想を付かしたのか、カイは更に苦笑いを浮かべ、自分に言い聞かせるようにその言葉を告げた。
「わかんなくて良いよ。わかんない方が良いかも」
「何よ、それ……自分から、言っておいて……」
何も言えない私は、カイを責める事しか出来ない。
嫌な奴だな……と自分で思いながらも、口を動かす事を……止められなかった。
「いつも……そう。カイは肝心な事は何も言わない。いつも……はぐらかして止めてしまう。そんなんじゃ、伝わる訳ないよ! 私は、察する事なんて得意じゃない。言ってくれないと、わからないよ!」
自分勝手。
何も言わないのは、私の方なのに。
どうして、私はこんな性格なのかな……。
こんな性格だから、カイとも上手くコミュニケーションが取れないし、夜宵に好きになって貰う為に近付く事すら出来ないのかもしれない……。
「そういうもんなんだよな。コミュニケーションをしないと、何にも伝わらないんだよな。人間って不便だ」
「…………」
「オレはさ、いのりんをイジメたい訳じゃねーんだ。オレはオレなりに、やりたい事、やらなくちゃならねー事があるんだよ。その為には、夜宵にちょっかいも出すし、いのりんを揺さぶったりもする」
こんなの、カイじゃない……。
真面目に話すカイなんて、カイらしくないよ……。
「だからさ、いのりんも逃げんのは止めようぜ」
「え?」
「さっき言っただろ。考える事、止めるの止めようぜ。オレは意地悪する為に、質問してんじゃねーもん。いのりんの為に言ってんだよ」
「私の為……」
どうしてカイが【死ゅ語霊】になったか、どうしてここに居るのかを考える事で、私の為になるなんて……意味、わかんない。
「いのりんだって、昔の事を何時までも引きずりたくねーだろ?」