(18) 【死ゅ語霊】と床
話をまとめる為に、今回はちょっとファンタジー系になりました。
「お前さ、空気ぐらい読んで帰れよ」
「空気なんか読めまセン」
また、いつもの空気だ。
いつもの……カイだ。
じゃあ、さっきのは一体何だったんだ……? 僕の思い過ごしで、何もなかった? それとも、カイの本音?
後で問いただすと決めたんだ。
これ以上、考えるのはやめよう。考えれば考える程、今のカイとのギャップで、さっきの事が幻のように思えてしまうから。
「もう、まどろっこしいデス。私を無視するなんて許せまセン。こうなったら、勝手に連れて行くまでデス!」
【守護霊】は僕の方を向き、親指と人差し指を擦り合わせ、パチンッと指を鳴らした。
すると、僕の身体は指一本も動かせなくなり、その場に固まる形になった。そして、少しずつ足の方から床に沈んでいく。
え?
な、何?
な、何で……ここに来て、ファンタジー満載……みたいな事になってんの!
待って、待って、待ってよ。これって、冗談だよね? 夢だよね? 幻だよね? だって、人は床に沈む訳ないし!
だけど、抵抗する事が出来ない。
夢じゃ……ない。
「…………っ」
声まで、出なかった。
これでは、助けを求める事さえも……もう、無理だ。
「足掻くのはやめておいた方が良いデス。さあ、行きまショウ。きっと、楽しいデスヨ? では、サヨウナラ。カイ――――」
「夜宵、本気で助けて欲しいって思ってるか?」
まだ何か言いたそうだった【守護霊】の言葉を遮り、カイは僕の前でしゃがみ込み、僕に言葉を告げる。
その間にも、どんどんと……しかしゆっくりと沈んでいく。
「――――っ!」
助けて欲しい! 助けて欲しいよ!
と……いくら心の中で叫んでも、声になってくれない。表情でも、表す事が出来ない。これでは、カイには届かない……。
もう、終わった……かも。
「しょーがねーな。助けてやるよ。その代わり、またブツブツ文句言うなよ。オネーさんと行きたかったとかな!」
言わない!
言わないから……早く!
「な、何をする気デス?」
「何って、お前には消えて貰うんだよ」
カイの手のひらに光の玉のようなものが現れる。やがて、その光は大きくなり、教室中を包み込んだ。
「じゃーな。【守護霊】さん」