(2) 【死ゅ語霊】と少女
全ての仕度を整え、いつも通りリビングに入る。
結局、ヒヨコの時計はゴミ箱行きとなってしまった。
自分で機械オンチとわかっていながらも、直そうと試みた為、完全にバラバラになり、この世のものとは思えない程になってしまったからだ。
どうせ修理に出しても、高い金をぼったくられるだけだし。
しかも、すぐにまた壊れてしまうだろうし……新しいヤツを買った方がまだマシだ。
と考えていても、へこむ。
お気に入りだったのだから。
ああ。
また親友の大樹に、
『お前、何個目だよ。よく、踏めるよなあ。しかも、自分で直そうとするとこが、凄いと思うぜ』
とか言われちゃうんだろうな。
今まで、もう、二十回くらい聞いただろう。
「よっ。おはよ」
ふかふかの白いソファーに足を組んで座り、片手にテレビのリモコン、もう片手にコーヒーのカップを持って飲みながら、笑顔で挨拶してくれる。
僕は、欠伸を噛み殺しながら、同じく挨拶した。
「おはよう。昨日は、よく眠れた?」
「うん。まあまあだね。そっちは?」
「何か良くない夢を見た気がするけど、まあまあ眠れたと思うよ」
何か僕も飲もうと思って、台所に向かおうとして足を止めた。
?
…………。
待て。
おかしい。
明らかに、おかしい。
何か、違和感がある。
僕って、朝からこんなに会話していただろうか? っていうか、一人暮らしで、この家には僕しかいないはずなんですけど。
再度、ソファーに座っている人……ヤツを見る。
夢でも何でもない。やっぱりいる。
僕と同じ歳くらいの少女が。
「……ちょっと待ってよ。君、誰?」
なるべく、平静を保ったが、声は震えていた。
だって、そうだろう。
本当は、僕一人しかいないはずのこの家に、見知らぬ少女がいるんだから。
だからと言って、泥棒には見えないし。
むしろ、思いっきりくつろいでるし。
何か、気味悪い。いっそ、泥棒の方がまだマシだった。
「ん?」
少女は、リモコンでテレビのスイッチを切り、透明なガラスの机の上に置いて、僕の方を見る。
「オレ? オレは、カイ。【しゅごれい】やってる。よく、間違われるから書くけど。こういう字」
カイと名乗る少女は、カップを持ったまま僕の横を通り過ぎ、後ろにある棚の上に置いてある電話のところで立ち止まる。
横に置いてある、どこかに行ってタダでもらったメモ帳と百均で買ったボールペンを勝手に取り、慣れた仕草で書いていく。
暫くし、僕の目の前にそのメモ帳を突きつける。
そこには、大きく(メモ帳いっぱいいっぱいに書いてあるので、ケンカをうっているのかと思うぐらいだった。でも、結構字は綺麗だった)書かれた、【死ゅ語霊】という文字。
死ゅ語霊?
「【死ゅ語霊】? 【守護霊】じゃなくて?」
「【守護霊】? 違うって。アイツらは……。まあ、良いか。ああ、それと。この【死ゅ語霊】つうのは、たいした意味ねーから」
「……【死ゅ語霊】……」
と言うか、当て字?
大した意味がないなら、守護霊でも良いような気がするんだけど……そこはツッコミをいれない方が良いのかな。
それより、やっぱり警察に連絡すべき……なのかな。
うーん、でも騒ぎになって注目されるのも嫌だし……。
でもでも、明らかに不審者だよね。
自分は【死ゅ語霊】だーとか言って、危なそうだし。
どうするべきか……。